2021年02月20日
『麒麟がくる』第38回―斎藤内蔵助について
《令和6年9月27日更新》
皆さんこんばんは。
今回は令和2年の大河ドラマ『麒麟(きりん)がくる』第38回に関しての楽しみ方を解説したいと思います。
大河ドラマを見てみたけれど、歴史もよくわからないし、どう楽しんでいいのかわからない。
歴史には興味あるけど、自分では積極的に勉強する気になれない、という方必見です!
※記事下部に武家や公家の人物名の読み仮名を載せています。
まずはあらすじ。
第38回のあらすじ
天正(てんしょう)2(1574)年、三淵弾正左衛門尉藤英(谷原章介)は、明智十兵衛光秀の居城・坂本(さかもと)城にいた。
将軍家・足利権大納言義昭(滝藤賢一)の挙兵(きょへい)に従い織田弾正大忠こと参議信長(染谷将太)に敵対したため、居城(きょじょう)の伏見(ふしみ)城を破却(はきゃく)されたのである。
一度は十兵衛や弟・細川民部大輔藤孝(眞島秀和)らとともに三好(みよし)家の城を攻めたが、結局許されず、義昭への忠義を貫き切腹していった。
十兵衛はそのことで信長に抗議するもかなわず、今度は河内(かわち)にて三好・本願寺(ほんがんじ)連合軍と対峙(たいじ)する。
坂本城へ戻った十兵衛を待っていたのは、稲葉伊予守良通入道一鉄(村田雄浩)の家臣、斎藤内蔵助利三(須賀貴匡)であった。
利三は、一鉄の横暴に耐えられず逃げ出してきたという。
十兵衛に仕えたいという利三を迎えた十兵衛は、信長に、利三を一鉄の下に返せと命じられる。
それを固辞した十兵衛は、信長に丹波(たんば)攻略命令を下される。
十兵衛は丹波攻略の準備のため、丹波へ潜入するのであった。
ということで、
第38回「丹波国略命令」の感想
とても面白かったです。
三淵藤英のエピソードも、斎藤利三のエピソードもしっかりと描かれましたね。
三淵家について詳しく知りたい方は、下記リンクをタップしてください:
『麒麟がくる』第30回―三淵氏の来歴
しかし、どんどん力をつけて大物になっていく信長と、昔と変わらず信長に異見する十兵衛の間に徐々に溝ができてきた気がしました。
信長が三淵(みつぶち)を切腹させたことで反感をもつ十兵衛。
稲葉(いなば)の下に戻ったら斬られるであろう利三を、それをわかっていて敢えて稲葉の下に返せという信長に反感を重ねる十兵衛。
さらに、関白前左大臣二条晴良(小藪千豊)と接近する信長を心配する正親町天皇。
蘭奢待(らんじゃたい)の一件と重ねて、信長の行きすぎを心配する正親町天皇ですが、先ほどの十兵衛の信長に対する反感の芽と正親町天皇の信長を抑えようとする気持ちが、本能寺(ほんのうじ)の変への伏線としてしっかり描かれていました。
関連記事:
『麒麟がくる』第15~16回―織田一族の関係性と斎藤新九郎高政の重臣たち
関連記事:
『麒麟がくる』第26回―摂関家の系譜
第38回の楽しみ方―斎藤内蔵助について―
今回はようやく登場した斎藤内蔵助利三〔以下「内蔵助」〕について書きたいと思います。
内蔵助はこの後の丹波攻めで十兵衛の重臣(じゅうしん)として活躍し、本能寺に変でも事前に十兵衛に計画を打ち明けられたうちの1人として有名です。
関連記事:
本能寺の変に学ぶ―覚悟を決める
内蔵助の父が誰かということについては諸説あるのですが、血筋としては斎藤山城守利政入道道三が乗っ取った斎藤(さいとう)家の出自ではあるようです。
参考記事:
大河ドラマを楽しむ方法(12)(『麒麟がくるまでお待ちください』第2~3回)
参考記事:
『麒麟がくる』第17~18回―斎藤家の血族関係と永禄元年までの織田家
母についても諸説あるのですが(※1)、一応ここでは通説の蜷川新右衛門(※2)親順の娘という説を採ることとします。
※1…下記「ゆーくんはどこ?」さんは内蔵助の母が、十兵衛の妻である妻木煕子の姉であるという説を採られています。となると、内蔵助は十兵衛の甥ということになります。
※2…蜷川親順の通称は定かではないのですが、一休さんでお馴染みで親順の曽祖父に当たる親当、親順の子・親世、その子・親長の3名はすべて「新右衛門」を名乗っているので、親順の通称も「新右衛門」と考えてまず間違いないと思われます。
内蔵助の前半生には諸説ありますが、一説によると幕府(ばくふ)の奉公衆(ほうこうしゅう)だったという話があります。
※年代としては長良川(ながらがわ)の戦い(弘治(こうじ)2年(1556年))の前後であるようですので、通説としては足利権大納言義昭の家臣となった十兵衛とは時間的に隔たりがあります。
参考記事:
『麒麟がくる』第15~16回―織田一族の関係性と斎藤新九郎高政の重臣たち
関連記事:
長良川の合戦―去り際を美しく
その後、斎藤治部大輔義龍〔高政〕を経て稲葉一鉄に仕えますが、上記のように一鉄の下を逃げ出して十兵衛に仕えることになりました。
そして面白いのがその血縁ですね。
内蔵助の母は、内蔵助の父とされる伊豆守利賢に離縁されてしまい、十兵衛と同じ土岐源氏(とき・げんじ)の一族であり幕府奉公衆であった石谷兵部大輔光政に再嫁(さいか)しています
その娘、つまり内蔵助の異父妹はなんと、四国(しこく)の雄・長宗我部宮内少輔元親〔以下「宮内」〕の正室(せいしつ)となっており、嫡子(ちゃくし)・弥三郎信親を生んでいるんです。
関連記事:
一宮城の戦いに学ぶ―キレた勢いで行動してはいけない
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実はこれを斡旋(あっせん)したのは十兵衛だと言われており、織田参議信長の命で長宗我部宮内との交渉窓口に立った十兵衛が、宮内の懐柔(かいじゅう)策として行ったと言います。
※この明智(あけち)―長宗我部(ちょうそかべ)ラインと羽柴(はしば)―三好(みよし)ラインの対立が本能寺の変の原因となったというのが本能寺の変の「四国説」です。
そして、内蔵助の娘のお福(ふく)は稲葉一鉄の子・兵庫頭重通の養子となり、さらに後、春日局(かすがのつぼね)と呼ばれ将軍家・徳川左近衛大将家光の乳母(めのと)となった話は有名ですね。
こんな感じで、ドラマの背景にある知識が分かるとドラマをもっと楽しめます!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
次回の記事を読みたい方は、下記リンクをタップしてください:
『麒麟がくる』第39回―原田備中守について
以下もご覧ください!
※トップ画像はイメージです。
○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・三淵 弾正左衛門尉〔または弥四郎〕 源 藤英
みつぶち だんじょうさえもんのじょう〔またはやしろう〕 みなもと の ふじひで
・明智 十兵衛 源 光秀
あけち じゅうべえ みなもと の みつひで
・征夷大将軍 足利 権大納言〔通称不明〕 源 朝臣 義昭〔義秋、一乗院覚慶〕
せいいたいしょうぐん あしかが ごんのだいなごん〔通称不明〕 みなもと の あそん よしあき〔よしあき いちじょういんかくけい〕
・織田 参議〔通称は三郎〕 平〔藤原、忌部〕 朝臣 信長
おだ さんぎ〔通称はさぶろう〕 たいら〔ふじわら、いんべ〕 の あそん のぶなが
・細川 兵部大輔〔通称は与一郎〕 源 朝臣 藤孝
ほそかわ ひょうぶのたゆう〔通称はよいちろう〕 みなもと の あそん ふじたか
・稲葉 伊予守〔通称は彦六郎〕 越智〔橘〕 朝臣 良通〔一鉄〕
いなば いよのかみ〔通称はひころくろう〕 おち〔たちばな〕 の あそん よしみち〔いってつ〕
・斎藤 内蔵助 藤原 朝臣 利三
さいとう くらのすけ ふじわら の あそん としみつ
・関白 二条 前左大臣〔通称不明〕 藤原 朝臣 晴良
かんぱく にじょう さきのさだいじん〔通称不明〕 ふじわら の あそん はるよし〔はれよし〕
・方仁〔諡号:正親町帝〕
みちひと〔諡号:おおぎまちのみかど〕
・斎藤 山城守〔通称は新九郎〕 藤原 朝臣 利政〔道三。他多数〕
さいとう やましろのかみ〔通称はしんくろう〕 ふじわら の あそん としまさ〔どうさん。他多数〕
・蜷川 新右衛門(?) 物部 親順
にながわ しんうえもん(?) もののべ の ちかのぶ
・蜷川 新右衛門 物部 親当
にながわ しんうえもん もののべ の ちかまさ
・蜷川 大和守〔通称は新右衛門〕 物部 朝臣 親世
にながわ やまとのかみ〔通称はしんうえもん〕 もののべ の あそん ちかよ
・蜷川 新右衛門 物部 親長
にながわ しんうえもん もののべ の ちかなが
・斎藤〔一色〕 治部大輔〔通称は新九郎〕 藤原〔源〕 朝臣 高政〔義龍〕
さいとう〔いっしき〕 じぶのたゆう〔通称はしんくろう〕 ふじわら〔みなもと〕 の あそん たかまさ〔よしたつ〕
・斎藤 伊豆守〔通称は右衛門尉〕 藤原 朝臣 利賢
さいとう いずのかみ〔通称はうえもんのじょう〕 ふじわら の あそん としかた
・石谷 兵部大輔〔通称不明〕 源 朝臣 光政
いしがい ひょうぶのたゆう〔通称不明〕 みなもと の あそん みつまさ
・長宗我部 宮内少輔〔土佐守。通称は弥三郎〕 秦 朝臣 元親
ちょうそかべ くないのしょう〔とさのかみ。通称はやさぶろう〕 はた の あそん もとちか
・長宗我部 弥三郎 秦 信親
ちょうそかべ やさぶろう はた の のぶちか
・征夷大将軍 徳川 左近衛大将〔通称不明〕 源 朝臣 家光
せいいたいしょうぐん とくがわ さこんえのだいしょう〔通称不明〕 みなもと の あそん いえみつ
・稲葉 兵庫頭〔通称は勘右衛門〕 越智〔橘〕 朝臣 重通
いなば ひょうごのかみ〔通称はかんうえもん〕 おち〔たちばな〕 あそん しげみち
☆武家の「通称」の普及を切に願います!
参考
ゆーくんはどこ?
歴史上の偉人、有名人と子孫の大百科
ぴえーるのテレビブログ
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筆者もこれまで「誰かの決めた人生」を歩んできて、望まない方向に人生が進み、これまで培ってきた能力を無駄遣いし、消耗しきった人生を歩んできました。
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最初はスピリチュアルな話については(スピリチュアルの分野のすべてがあやしいわけではありませんが)少々距離を置きながらメルマガを読んでいたのですが、
きちんと論理的な説明をされる方だったので、
今ではファンになって結局会いに行ってしまいましたw
(自分で言いますが、上記のようなブログを書いている僕が「論理的」というのだから、信じてくださいw)
とりあえず、他人に振り回されて疲れを感じた方は下記リンクをタップして一読してみてください。
【創造者としての目覚め】
それで、納得した方だけその先に進んでもらえば大丈夫です。
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麒麟がくる 後編 (2) (NHK大河ドラマ・ガイド)
NHK大河ドラマ「麒麟がくる」オリジナル・サウンドトラック Vol.2
2020年NHK大河ドラマ「麒麟がくる」完全読本 (NIKKO MOOK)
NHK大河ドラマ歴史ハンドブック 麒麟がくる: 明智光秀とその時代 (NHKシリーズ NHK大河ドラマ歴史ハンドブック)
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記事を読んでいただき、ありがとうございました!他の記事もぜひご覧下さい。
次回は『麒麟がくる』第39回について。
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今期イチオシ曲!ぜひ聞いてください!
【Cover】Nowhere Man / Joshu Washiya
※The Beatlesの楽曲のカバー。ボーカル・コーラスは筆者の声。楽器隊は打ち込みですが、機材が整い次第自分で演奏する予定です。
『青天を衝け』第31回―井上家について
『青天を衝け』第30回―五代家について
『青天を衝け』第29回―伊藤博文について
『青天を衝け』第28回―大隈重信について
『青天を衝け』第27回―「藩」はどうなったのか?
『青天を衝け』第26回―高松凌雲について
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Posted by 鷲谷 城州 at 20:00│Comments(2)
│テレビ
この記事へのコメント
こんにちは!
斎藤利三と明智光秀、長宗我部元親とを繋ぐ土岐氏ラインが伏線となる『四国説』は
本能寺の変の直接の動機として、最有力だと思います!
三好と秀吉の瀬戸内ラインが
毛利攻略に有効である以上、合理的な信長は秀吉を優遇するだろうし、長宗我部征伐に反対すれば光秀と言えども許されないでしょうね。
斎藤利三と明智光秀、長宗我部元親とを繋ぐ土岐氏ラインが伏線となる『四国説』は
本能寺の変の直接の動機として、最有力だと思います!
三好と秀吉の瀬戸内ラインが
毛利攻略に有効である以上、合理的な信長は秀吉を優遇するだろうし、長宗我部征伐に反対すれば光秀と言えども許されないでしょうね。
Posted by ゆうくんまま at 2021年02月27日 14:20
ゆうくんままさん、こんばんは!
四国説、僕も一番有力だと思っています。
他の「怨恨」とか「陰謀」説は感情とか倫理観に依存する気がするので、不確定要素が多すぎる気がするんですよね。
それこそ合理的説明がつかない気がします。
それに比べると四国説は戦略的・政治的利害関係が明確で、信長も秀吉も光秀も合理的でごく自然な流れの中で動いた結果が本能寺の変だと言える気がするんですよね。
四国説、僕も一番有力だと思っています。
他の「怨恨」とか「陰謀」説は感情とか倫理観に依存する気がするので、不確定要素が多すぎる気がするんですよね。
それこそ合理的説明がつかない気がします。
それに比べると四国説は戦略的・政治的利害関係が明確で、信長も秀吉も光秀も合理的でごく自然な流れの中で動いた結果が本能寺の変だと言える気がするんですよね。
Posted by 鷲谷 壮介 at 2021年02月27日 21:08
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