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2020年11月08日

『麒麟がくる』第26回―摂関家の系譜

一乗川
《令和6年11月14日更新》

皆さんこんばんは。
今回は今年の大河ドラマ『麒麟(きりん)がくる』第26回に関しての楽しみ方を解説したいと思います。

大河ドラマを見てみたけれど、歴史もよくわからないし、どう楽しんでいいのかわからない
歴史には興味あるけど、自分では積極的に勉強する気になれない、という方必見です!
※記事下部に人物の読み仮名をのせています。

【『麒麟がくる』の楽しみ方】
・第1~2回―当時の三傑と明智家/リアルな戦の描写・第3~4回―美濃の情勢/織田家の状況
・第5~6回―当時の京都の情勢・第7~8回―尾張国内の政治情勢/当時の三河情勢
・第9~10回―土岐一族とは/織田家の血縁関係・第11~12回―なぜ朽木谷か?/信長家臣団の萌芽
・第13~14回―戦国最強の傭兵団/村木砦の戦い・第15~16回―織田一族の関係性/新九郎高政の重臣たち
・第17~18回―斎藤家の血族関係/永禄元年までの織田家・第19~20回―足利将軍家の動き/桶狭間の戦い
・第21回―松平蔵人の親族
・『麒麟がくるまでお待ちください』第2~3回―斎藤道三二代説/前田利家の生涯
・『麒麟がくるまでお待ちください』第4回―羽柴藤吉郎の名称
・総集編第1回・第22回―三好氏の血縁関係
・第23回―三好氏の血縁関係(2)・第24回―剣豪の系譜
・第25回―朝倉氏の系譜


まずはあらすじ。



第26回のあらすじ


足利左馬頭義昭(滝藤賢一)の話を聞いた明智十兵衛光秀(長谷川博己)は、義昭に将軍(しょうぐん)の器を見出し、朝倉左衛門督義景(ユースケ・サンタマリア)にそのことを進言した。

義昭の元服(げんぷく)の際に烏帽子親(えぼしおや)を務め、すっかり上洛(じょうらく)する気になった義景であったが、一族や重臣(じゅうしん)たちは乗り気ではない。

その様子を見た十兵衛は朝倉(あさくら)家に上洛は難しいと見て取って、稲葉山(いなばやま)城改め岐阜(ぎふ)城に拠る織田尾張守信長(染谷将太)を訪れた。

信長は上洛に前のめりで、十兵衛に義昭を連れてこいと言う。

越前(えちぜん)に戻った十兵衛は、義景の下を去り義昭らとともに信長を頼ることを考えるが、上洛に乗り気になっていた義景の説得に頭を悩ます。

そこで、三淵弾正左衛門尉藤英(谷原章介)は、朝倉一族や重臣たちと謀り事をめぐらす…

ということで、


第26回「三淵の奸計」の感想


誰もがおっしゃっていますが、義景の子・阿君丸(くまぎみまる)(森優理斗)の暗殺はショッキングでしたね。

当時、病気などの健康上の問題で子供が亡くなることは珍しくなかったとはいえ、あの愛くるしい様子を見せられたらたまりませんね。

朝倉一族についての参考記事を読みたい方は、下記リンクをタップしてください:
『麒麟がくる』第25回―朝倉氏の系譜

そして、その首謀者が三淵藤英であるという描き方をされたのもちょっと気の毒でした。
史実では藤英が関わったという証左は何一つないので、これで悪いイメージがついてしまうのはなんとも言えませんね。

参考記事:
『麒麟がくる』第30回―三淵氏の来歴

ただ、物語におけるスパイスとしてこれだけ感情移入させる展開はうまいと思いました。

それと、義昭元服に至るまでの朝廷(ちょうてい)内の描写が良かったですね。

これまでの作品でこの頃の朝廷の様子が描かれることは少なかったので、かなり新鮮でした。

近衛前久役の本郷奏多氏もよかったのですが、二条晴良役の小藪千豊氏のいやぁ~な感じが素晴らしかったです!

吉本新喜劇で磨かれたであろう演技力は芸人の域を超えていました。


吉本関連の記事:
松本チーム絶対笑ってはいけない温泉旅館の旅!

同関連記事:
浜田チーム体育館で24時間鬼ごっこ

同関連記事:
松本一人ぼっちの廃旅館1泊2日の旅



第26回の楽しみ方―摂関家の系譜―


今回は、近衛前久、二条晴良らの公家(くげ)が活躍したということで、彼らの素性について解説しようと思います。

まず前提知識として「近衛(このえ)」とか「二条(にじょう)」は名字に当たる名前となります。
つまり、「織田(おだ)」とか「朝倉」とかと同様、彼らは「近衛」や「二条」の他に「源(みなもと)」「平(たいら)」「藤原(ふじわら)」「橘(たちばな)」のような「氏(うじ)」をもっているということです。

参考記事:
武家や公家の名前について

では、彼らの「氏」は何なのかというと、二人とも「藤原」氏となります。

中臣鎌足に始まる藤原氏ですね。
ここで、藤原氏の来歴を軽くおさらいしてみましょう。

藤原氏は鎌足の孫の代で大きく四家(しけ)に別れています。

・武智麻呂から始まる「南家(なんけ)
・宇合から始まる「式家(しきけ)
・麻呂から始まる「京家(きょうけ)
・房前から始まる「北家(ほっけ)

です。
※上記4名は「藤原四子(しし)」と呼ばれます。

近衛家・二条家はこのうち北家の血筋を受け継いでいます。


関連記事(北家出身の武家の例①):
『麒麟がくる』第31回―浅井家の来歴

関連記事(同②):
『麒麟がくる』第17~18回―斎藤家の血族関係と永禄元年までの織田家


北家は奈良(なら)時代にはそれほどの勢力はもっていなかったのですが、平安(へいあん)時代になると冬嗣が天皇の外祖父(がいそふ)(母方の祖父)となり、権力を握ります。

冬嗣の子孫は代々摂政(せっしょう)・関白(かんぱく)に任命されるようになり、ここに「摂関家(せっかんけ)」という地位が確立されます。

摂政・関白についての参考記事:
「摂政」の歴史

そしてその子孫には有名な藤原道長・頼通がおり、その頃に藤原北家は栄華を極めます。
※道長の子孫は「御堂流(みどうりゅう)」と呼ばれています。

その頼通の子孫である忠通の子供の代にはその御堂流が三家に別れます。

そのうちの一家は「九条(くじょう)家」と言い、鎌倉幕府(かまくら・ばくふ)草創期に源頼朝の支持を受けた九条兼実を祖とする家です。

もう一家が基実を祖とする「近衛家」です。
この「近衛家」の末裔(まつえい)が今回の大河で活躍している近衛前久です。

※さらにその子孫にあたるのが第34・38・39代内閣総理大臣・近衛文麿で、その孫が第79代内閣総理大臣・細川護熙氏です。
※三家のうちもう一家は「松殿(まつどの)家」というのですが、今回の物語には登場していないので割愛します。


九条兼実の子孫はさらに分岐しており、東福寺(とうふくじ)を建立したことで有名な道家の子のうち、良実が「二条家」を、実経が「一条(いちじょう)家」を立てています。

関連記事:
【京都旅行10】歴史と風情を堪能―九条道家が創建した東福寺の魅力

※道家の子のうち、頼経は鎌倉幕府四代将軍となっています。
※土佐(とさ)で活躍した一条兼定らはこの一条家の分流です。また、鎌倉幕府で活躍した一条能保は道長の弟の子孫であるので別家となります。


兼定についての関連記事:
四万十川の合戦―戦う前に勝つ

同関連記事:
安芸城の合戦―「タイミングの勢法」の威力



この二条良実の子孫が今回登場した二条晴良となります。

さらに、上記・近衛基実の子孫は「鷹司(たかつかさ)家」に分岐しています。

以上の「九条家」「近衛家」「二条家」「一条家」「鷹司家」の五家がかわるがわる摂政・関白を歴任するようになったため、これらは総称して「五摂家(ごせっけ)と呼ばれています。

戦国(せんごく)時代を描いた多くの物語ではこれら五摂家の様子が描かれることはあまりないのですが、彼らの中では熾烈な「摂政・関白」就任争いが繰り広げられていました。

あの手この手を使って時の摂政・関白を失脚させ、自分がその地位に就こうという争いです。

そのため、今回近衛前久が悩まされたような「誰を次期将軍に推挙するか」というのは大変重要な案件であり、推挙した人物に落ち度があると五摂家の他の人物から猛批判を浴び、摂政・関白の地位から引きずり降ろされてしまうのです。

※羽柴秀吉はこのような五摂家の骨肉の争いの中に割って入る形で関白に就任したため、対五摂家政策に大変気を遣ったようです。また、豊臣(とよとみ)家が滅んだ大坂の陣の背景には、関白の地位を取り戻そうとした五摂家の暗躍があったという人もいます。

↓参考:近衛家・二条家略系図
※タップで拡大されます。
近衛家・二条家略系図

こんな風に、ドラマの背景にある知識が分かるとドラマをもっと楽しめます!

というわけでまだまだ説明したいことはたくさんありますが、今回は以上です!

最後まで読んでいただきありがとうございました!


次回の記事を読みたい方は、下記リンクをタップしてください:
『麒麟がくる』第27回―「会合衆」とは何者か?


以下もご覧ください!

※トップ画像は一乗谷を流れる一乗川です。

○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・足利 左馬頭〔通称不明〕 源 朝臣 義秋〔義昭、一乗院覚慶〕
あしかが さまのかみ〔通称不明〕 みなもと の あそん よしあき〔よしあき、いちじょういんかくけい〕
・明智 十兵衛 源 光秀
あけち じゅうべえ みなもと の みつひで
・朝倉 左衛門督〔通称は孫次郎〕 日下部 朝臣 義景
あさくら さえもんのかみ〔通称はまごじろう〕 くさかべ の あそん よしかげ
・織田 尾張守〔通称は三郎〕 平〔藤原、忌部〕 朝臣 信長
おだ おわりのかみ〔通称はさぶろう〕 たいら〔ふじわら、いんべ〕 の あそん のぶなが
・三淵 弾正左衛門尉〔または弥四郎〕 源 藤英
みつぶち だんじょうさえもんのじょう〔またはやしろう〕 みなもと の ふじひで
・関白 近衛 左大臣〔通称不明〕 藤原 朝臣 前久〔晴嗣、前嗣〕
かんぱく このえ さだいじん〔通称不明〕 ふじわら の あそん さきひさ〔はるつぐ、さきつぐ〕
・前関白 二条 前左大臣〔通称不明〕 藤原 朝臣 晴良
さきのかんぱく にじょう さきのさだいじん〔通称不明〕 ふじわら の あそん はれよし〔はるよし〕
・大織冠内大臣 中臣〔藤原〕 連? 鎌足
たいしょっかんないだいじん なかとみ〔ふじわら〕 の むらじ? かまたり
・右大臣 藤原 朝臣 武智麻呂
うだいじん ふじわら の あそん むちまろ
・参議式部卿兼太宰帥 藤原 朝臣 宇合
さんぎしきぶきょうけんだざいのそち ふじわら の あそん うまかい
・参議兵部卿 藤原 朝臣 麻呂
さんぎひょうぶきょう ふじわら の あそん まろ
・参議民部卿 藤原 朝臣 房前
さんぎみんぶきょう ふじわら の あそん ふささき
・左大臣 藤原 朝臣 冬嗣
さだいじん ふじわら の あそん ふゆつぐ
・摂政太政大臣 藤原 朝臣 道長
せっしょうだじょうだいじん ふじわら の あそん みちなが
・摂政/関白太政大臣 藤原 朝臣 頼通
せっしょう/かんぱくだじょうだいじん ふじわら の あそん よりみち
・摂政/関白太政大臣 藤原 朝臣 忠通
せっしょう/かんぱくだじょうだいじん ふじわら の あそん ただみち
・征夷大将軍 右近衛大将〔通称は三郎〕 源 朝臣 頼朝
せいいたいしょうぐん うこんえのだいしょう〔通称はさぶろう〕 みなもと の あそん よりとも
・摂政/関白 九条 太政大臣〔通称不明〕 藤原 朝臣 兼実
せっしょう/かんぱく くじょう だじょうだいじん〔通称不明〕 ふじわら の あそん かねざね
・摂政/関白 近衛 左大臣〔通称不明〕 藤原 朝臣 基実
せっしょう/かんぱく このえ さだいじん〔通称不明〕 ふじわら の あそん もとざね
・内閣総理大臣 近衛 (通称不明) 藤原 文麿
ないかくそうりだいじん このえ (通称不明) ふじわら の ふみまろ 
・内閣総理大臣 細川 (通称不明) 源 護熙
ないかくそうりだいじん ほそかわ (通称不明) みなもと の もりひろ
・摂政/関白 九条 左大臣〔通称不明〕 藤原 朝臣 道家
せっしょう/かんぱく くじょう さだいじん〔通称不明〕 ふじわら の あそん みちいえ
・関白 二条 左大臣〔通称不明〕 藤原 朝臣 良実
かんぱく にじょう さだいじん〔通称不明〕 ふじわら の あそん よしざね
・摂政/関白 一条 左大臣〔通称不明〕 藤原 朝臣 実経
せっしょう/かんぱく いちじょう さだいじん〔通称不明〕 ふじわら の あそん さねつね
・征夷大将軍 権大納言〔通称不明〕 藤原 朝臣 頼経
せいいたいしょうぐん ごんのだいなごん〔通称不明〕 ふじわら の あそん よりつね
・一条 権中納言〔通称不明〕 藤原 朝臣 兼定
いちじょう ごんのちゅうなごん〔通称不明〕 ふじわら の あそん かねさだ
・一条 権中納言〔通称不明〕 藤原 朝臣 能保
いちじょう ごんのちゅうなごん〔通称不明〕 ふじわら の あそん よしやす
・関白 羽柴 太政大臣〔通称は藤吉郎〕 豊臣 朝臣 秀吉
かんぱく はしば だじょうだいじん〔通称はとうきちろう〕 とよとみ の あそん ひでよし
☆武家の「通称」の普及を切に願います!

参考
坂の上のサインボード
ぴえーるのテレビブログ
歴史上の偉人、有名人と子孫の大百科


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今期イチオシ曲!ぜひ聞いてください!
【Cover】Nowhere Man / Joshu Washiya

※The Beatlesの楽曲のカバー。ボーカル・コーラスは筆者の声。楽器隊は打ち込みですが、機材が整い次第自分で演奏する予定です。








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Posted by 鷲谷 城州 at 20:00│Comments(0)テレビ
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