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2020年05月16日

『麒麟がくる』第13~14回―戦国最強の傭兵団/村木砦の戦い

岐阜城
《令和6年4月17日更新》

皆さんこんばんは。
今回は今年の大河ドラマ『麒麟(きりん)がくる』第13~14回)に関しての楽しみ方を解説したいと思います。

大河ドラマを見てみたけれど、歴史もよくわからないし、どう楽しんでいいのかわからない
歴史には興味あるけど、自分では積極的に勉強する気になれない、という方必見です!
※記事下部に武家や公家の人物名の読み仮名を載せています。

【『麒麟がくる』の楽しみ方】
・第1~2回―当時の三傑と明智家/リアルな戦の描写 ・第3~4回―美濃の情勢/織田家の状況
・第5~6回―当時の京都の情勢 ・第7~8回―尾張国内の政治情勢/当時の三河情勢
・第9~10回―土岐一族とは/織田家の血縁関係 ・第11~12回―なぜ朽木谷か?/信長家臣団の萌芽


まずはあらすじ。



第13~14回のあらすじ


土岐美濃守頼芸(尾美としのり)からの暗殺未遂の報復として、斎藤山城守利政(本木雅弘)は頼芸のかわいがっていた鷹をすべて惨殺した。

恐怖を感じた頼芸は美濃(みの)を去り、近江(おうみ)へと向かった。

これにより土岐(とき)氏対斎藤(さいとう)氏の戦を避けることに成功した山城守だったが、その一連の行動は長男・新九郎高政(伊藤英明)の父への反感を育てることとなってしまった。

一方で、山城守は愛娘・帰蝶(きちょう)(川口春奈)の婿である織田三郎信長(染谷将太)の人物に興味をもち、面会を申し入れた。

突然の面会打診に戸惑う信長であったが、帰蝶の知恵を宿した眼が光る。

信長との面会のため、尾張(おわり)・聖徳寺(しょうとくじ)を訪れた斎藤山城守。

寺での面会の前に、小屋に隠れて信長の様子を観察し、取るに足らないやつだと判断したら寺を囲んで殺す、と明智十兵衛(長谷川博己)に告げた。

果たして現れた信長は、300はいるであろう大鉄砲(てっぽう)隊を引き連れ、常識はずれな派手な格好をしていた。

度肝を抜かれた山城守は寺へ向かい、信長を待つが一向に現れない。

しびれを切らして帰ろうと思った矢先、信長は現れた。

先ほどとは打って変わって、きれいな正装で、近習(きんじゅう)もつれずたった一人で現れた。

その信長のふるまいと、寺内でのやり取りに心を打たれた山城守は信長をいたく気に入った。

稲葉山(いなばやま)城に戻った山城守は、織田(おだ)家が今川(いまがわ)家に攻められているという情報に接する。

すぐに援軍を送ろうとするが、長男・高政らが反対する。

山城守は反対を押し切って織田家への加勢を派兵する。

一方、側室であり高政の母である深芳野(みよしの)(南果歩)が突然の自殺を遂げた。

悲嘆にくれる山城守は、高政に責められ、ついに高政に家督(かとく)を譲ることを承諾するのであった。

ということで、


第13回「帰蝶のはかりごと」の感想


面白かったです!

他の方も書いていらっしゃいますが、山城守と(新九郎)高政の奥でのやり取りは緊張感がすさまじく、「これぞ大河の醍醐味!」という印象です。

「不穏な空気」についての参考記事を読みたい方は、下記リンクをタップしてください:
『麒麟がくる』第11~12回―なぜ朽木谷か?/信長家臣団の萌芽

大河ドラマは歴史を扱っているだけに、描くべき事象が多すぎて焦点がぼやけることが多いです。

しかし今作は、ある程度いろいろな事象を描いておきながら(新九郎)高政の父への反感が増していく様子を丁寧に描いていて、素晴らしいと思いました!

あとは、これは下記「シネマの万華鏡」さんがすでにおっしゃっていますが、やはり帰蝶が伊呂波太夫(いろはだゆう)(尾野真千子)を使って根来衆(ねごろしゅう)を集めるというのちょっと無理がある気はしました笑

しかし、非常に面白い設定なので、僕は全然ありだと思いました!

あとはどうでもよいのですが、尾野真千子さん好きです笑



第13回の楽しみ方―戦国最強の傭兵団―


今回は帰蝶の話に登場した「根来衆」について説明しようと思います。


関連記事:
雑賀・根来合戦から学ぶ―つまらない職場を楽しくする方法

関連記事:
石山合戦から学ぶ―「理念」のもつパワー

関連記事:
大航海時代に日本が侵略されなかった理由(5)―日本とヨーロッパの戦力差(後編)


物語中に突然登場して、「鉄砲隊」みたいな話をしていたので、どうやら鉄砲に関係した人たちらしいということはわかったと思います。

しかし詳細説明がなかったので、この辺を補足させていただこうと思います。
(物語の進行上、説明してられなかったのだと思います)

そもそも「根来衆」とは何者か。

「根来衆」とは、紀州(きしゅう)根来寺(ねごろじ)(和歌山県岩出市(わかやまけん・いわでし))を拠点とした傭兵(ようへい)集団です。

↓根来寺と那古野城の位置関係
※クリックで拡大されます。
根来寺位置図


日本の戦国(せんごく)時代にも、ヨーロッパみたいな傭兵団がいたんだ、と思った方もいるかもしれませんが、いました。

※ただし、『ベルセルク』に登場する「鷹の団」の初期のような旅する傭兵団ではなく、あくまで紀州根来寺を拠点としていました。


関連記事:
ベルセルク1~4巻

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関連記事:
ベルセルク13~16巻


もともと彼らは根来寺というお寺を守る僧兵(そうへい)(=武装した坊さん)集団でした。

では、なぜお寺の僧が武装する必要があったのか?

紀州はもともと管領(かんれい)家である畠山(はたけやま)家が守護(しゅご)に任命されていました。

政治情勢が比較的安定していたころは、おそらく守護畠山家による治安維持機能が働いていたと思うので、自衛する必要は大きくはなかったと思われます。

しかし、応仁(おうにん)元年(1467年)の応仁の乱のころから戦国の嵐が吹き始め、紀州根来も巻き込まれていきました。

守護の畠山家は守護の仕事そっちのけで、家督争いにご執心。

守護による治安維持が行われないんだから、悪い人たちはやりたい放題です。

そんな中、根来寺は自分たちの身を守るために武装し始めたようです。
(近くの雑賀衆(さいかしゅう)も同様です)

彼らは次第に大名(だいみょう)クラスの勢力をもつようになり、天文(てんぶん)12年(1543年)、革命的な出来事が起こります。

そう、九州大隅(きゅうしゅう・おおすみ)種子島(たねがしま)に鉄砲が伝来したのです。

どこから聞きつけたのか、根来衆の津田監物(算長)は種子島に渡り、2丁あった内の1丁を購入し、根来に持ち帰ります。
※津田監物がもともと種子島の住人だったという説もあります。

監物は根来にいた刀鍛冶(かたなかじ)・芝辻清右衛門に鉄砲をわたし、生産を依頼。

天文14年(1545年)に第1号が完成したのでした。
※伝来してたった2年で生産するというのは世界的に見ても驚異的なスピードと言われています。

参考記事:
大航海時代に日本が侵略されなかった理由(5)―日本とヨーロッパの戦力差(後編)


こうして根来衆は独自に鉄砲を大量生産することに成功。
※清右衛門はのち堺(さかい)に移り、堺が鉄砲の大産地となる端緒となります。

噂を聞きつけた大名から傭兵として依頼がかかり、雑賀衆と並んで戦国最強の傭兵団へと成長していきました。
※このころは具体的にどの合戦に参加していたのか不明

そして、のちに織田三郎にも協力していくことになります。




第14回「聖徳寺の会見」の感想


「聖徳寺の会見」、素晴らしかったです!
言葉少ないやり取りで、言葉の裏に多くの意味・気持ちをにじませての会話、非常に日本人らしく心に染み入りました!

ただ、前田利家(入江甚儀※1)、佐々成政(菅裕輔※2)が登場しましたが、やはり(いみな)と通称の問題で言いたいことがありますね。しつこいようですが 笑
※1入江甚儀:来ましたね!僕は『軍師官兵衛』のころから彼を見込んでいます!
※2菅裕輔:あの「ガースー」の息子さんとのことです!


なぜ利家を「又左衛門」(略称「又左(またざ)」)という通称で呼ばせない??

柴田「権六」と同じで、せっかく親しみやすい通称があるのにもったいない…

成政の通称「内蔵助」はあまり一般的ではありませんが、やはり通称の方がいいです。

何度も言いますが、「諱」は日常生活ではほとんど使いません。

まぁそれを措いても面白かったのでよしとしましょう笑

ついに聖徳寺の会見が終わり、村木砦(むらきとりで)の戦いも終わって山城守が家督を譲りましたね!

先が楽しみです!




第14回の楽しみ方―村木砦の戦い―


上記感想ではあまり触れませんでしたが、今回は「村木砦の戦い」について説明したいと思います。

戦が起こったのは尾張・三河(みかわ)国境のギリギリ尾張側の村木砦というところなのですが、大河を見ているだけだと織田家がどれだけピンチなのかわかりづらかったと思います。

↓まずは下の地図をご覧ください。(村木砦の戦い以前の周辺勢力図)
※クリックで拡大されます。
村木砦の戦い 周辺図(合戦前)


第11回で三郎信長は「緒川(おがわ)城を今川にくれてやる」、みたいなことを言っていました。

緒川城は水野(みずの)家の城で、山岡荘八氏の小説『徳川家康』の記事でも書いていますが、当主の水野下野守(信元)は親織田派です。

参考記事:
これぞ徳川家の柱石・三河武士の死にざまだ!!(山岡荘八『徳川家康』第2巻)

ですから緒川城(と、水野家の所領の刈屋(かりや)城)はもともとは織田方だったのですが、第11回の和議で今川方に売られてしまいます。

参考記事:
『麒麟がくる』第11~12回―なぜ朽木谷か?/信長家臣団の萌芽

しかし下野守の心は織田方にあったようで、織田弾正忠〔備後守〕信秀の死後、また織田方に鞍替え(くらがえ)しています。

それと前後して、今川氏は調略によって織田家臣の山口教継と彼の拠る鳴海(なるみ)城を味方につけることに成功しています。

これによって織田方は熱田(あつた)の目と鼻の先に敵勢力を臨む形となってしまい、窮地に陥りました。

緒川城・刈屋城の水野家がいなければ、すぐにでも末盛(すえもり)城辺りを攻められていたかもしれませんが、水野家の鞍替えによって九死に一生を得ます。

しかし今川家は戦略上重要な緒川城を攻めるために、緒川城のすぐ北に「村木砦」を建設します。

今回の「村木砦の戦い」は言わずもがな、この村木砦から今川勢を追い出すための戦いです。

三郎改め上総介信長は今川勢の背後をつくために、松平(まつだいら)家の一族である大給(おぎゅう)松平家(@大給城)を味方につけます。

しかし、知多(ちた)半島の付け根に位置する寺本(てらもと)城の裏切りに遭います。

それによって那古野(なごや)城と緒川城との連絡(海路)を断たれたため、熱田を発し海に出た上総介は、寺本城を避けて遠回りして緒川城に上陸し、村木砦の陥落に成功しました。

↓村木砦の合戦時の勢力図
※クリックで拡大されます。
村木砦の戦い 周辺図(合戦時)


ちなみに、斎藤山城守からの援軍は上掲地図上の「志賀(しが)・田幡(たばた)の陣」と書かれた位置に滞陣しました。

地図で見るとわかりやすいと思うのですが、見事に清須(きよす)城を牽制して、那古野城を守る位置にいますね。

こんな風に、ドラマの背景にある知識が分かるとドラマをもっと楽しめます!

まだまだ説明したいことはたくさんありますが、今回は以上です!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

以下もご覧ください!

※トップ画像はイメージです。

○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・土岐 美濃守〔通称不明。左京大夫〕 源 朝臣 頼芸
とき みののかみ〔通称不明。さきょうのだいぶ〕 みなもと の あそん よりのり〔よりあき〕
・斎藤 山城守〔通称は新九郎〕 藤原 朝臣 利政〔道三。他多数〕
さいとう やましろのかみ〔通称はしんくろう〕 ふじわら の あそん としまさ〔どうさん。他多数〕
・斎藤 新九郎 藤原 高政〔義龍〕
さいとう しんくろう ふじわら の たかまさ〔よしたつ〕
・織田 上総介〔通称は三郎〕 平〔藤原、忌部〕 信長
おだ かずさのすけ〔通称はさぶろう〕 たいら〔ふじわら、いんべ〕 の のぶなが
・明智 十兵衛 源 光秀
あけち じゅうべえ みなもと の みつひで
・津田 監物 橘 算長
つだ けんもつ たちばな の かずなが
・芝辻 清右衛門 (氏不明) (諱不明)
しばつじ せいうえもん (氏不明) (諱不明)
・前田 又左衛門 菅原 利家
まえだ またざえもん すがわらの としいえ
・佐々 内蔵助 源 成政
さっさ くらのすけ みなもとの なりまさ
・水野 下野守(通称は藤四郎、藤七郎) 源 朝臣 信元
みずの しもつけのかみ(通称はとうしろう、とうしちろう) みなもとの あそん のぶもと
・山口 左馬助(通称不明) 多々良 朝臣 教継
やまぐち さまのすけ(通称不明) たたらの あそん のりつぐ
☆武家の「通称」の普及を切に願います!

参考
第13回
2020、映像メディアは死んだ ~ テレビドラマ・映画・Web動画をめぐって
シネマの万華鏡
散文的で抒情的な、わたくしの意見
第14回
ゆーくんはどこ?
ぴえーるのテレビブログ
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次回は「鶴岡八幡宮の楽しさは〇〇である!(2)」。

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I Feel Glad (BGM Ver.) / Joshu Washiya

※筆者が中学生の時に作詞・高校生の時に作曲した曲を平成22年に自作RPGのBGM用に再アレンジしたものです。






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Posted by 鷲谷 城州 at 21:00│Comments(2)テレビ
この記事へのコメント
こんばんは。仰る通り!
道三vs高政(義龍)の確執を丁寧に描いて
弟暗殺→長良川合戦へと盛り上がりましたね!主役の光秀よりも、時間もお金もたっぷりとかけてますw しかも、史実(信長公あ)を忠実に再現する事で新しい斎藤道三像を
描くという斬新な手法!高政も魅力的な人物になってます。
ご指摘の、諱と通称の混在、今回権六が登場してこけそうになりました笑
Posted by 前半の主人公は斎藤道三!? at 2020年05月19日 23:48
>前半の主人公は斎藤道三!?さん
コメントありがとうございます!

ここまで丁寧に作り込まれている大河は近年まれだというくらい、素晴らしい父子関係の描写でしたね。

しかもおっしゃる通り、史実に忠実なのに斬新というのは、よほど歴史を読み込んで、脚本を練り上げていないとできない業だと思います。

僕も突然の「権六」でびっくりしましたが、ちょっと安心しました。
「柴田勝家」より「柴田権六」の方が好きです笑

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Posted by Sosuke WashiyaSosuke Washiya at 2020年05月20日 00:40
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