2021年10月30日
『青天を衝け』第31回―井上家について

皆さんこんばんは。
今回は令和3年の大河ドラマ『青天を衝け』第31回に関しての楽しむためのヒントを解説したいと思います。
大河ドラマを見てみたけれど、歴史もよくわからないし、どう楽しんでいいのかわからない。
歴史には興味あるけど、自分では積極的に勉強する気になれない、という方必見です!
まずはあらすじ。
第31回のあらすじ
明治4(1872)年、渋沢栄一美雄(吉沢亮)は父・渋沢市郎右衛門美雅(小林薫)の最期を看取った。
従弟であり妹・ていの婿養子となった須永才三郎(石川竜太郎)こと渋沢市郎に「中の家」を任せ、東京の自邸へと戻った。
そこで栄一は一枚の手紙を読み、顔面蒼白となる。
栄一は、大きなお腹を抱えた女性・大内くに(仁村紗和)を自邸にいざない、妻・千代(橋本愛)に不貞を詫びた。
くにが宿しているのは自分の子だという。
千代は怒るどころか温かな笑顔で栄一を許し、くにに一緒に暮らすことを提案する。
一方、箱館戦争で新政府に敗れ投獄されていた従兄・渋沢成一郎英明(高良健吾)が出所し、栄一邸を訪れた。
道を違えたことで罵り合う栄一と成一郎であったが、お互い生きていたことを涙を流して喜び合った。
成一郎は「喜作」と名を戻し、大蔵省に入省した。
新政府では、欧米へ旅立った大久保一蔵利通(石丸幹二)・岩倉具視(山内圭哉)らに代わり、西郷吉之助隆盛(博多華丸)・大隈八太郎重信(大倉孝二)・井上聞多馨(福士誠治)らが政権の中枢にいた。
大久保は「新規の改正はするな」と言い残して旅だったが、栄一は「廃藩置県に関わることだったら『新規の改正』には当たらない」と主張し、廃藩置県の一環として「銀行」の設立に取り組んだ。
栄一は豪商である三井組と小野組の番頭を呼び出し、「合本」による民間の銀行の設立を希望したが、2人は「合本」にはいい顔をしない。
栄一は2人に「それならば、官金を取り扱わせることはできない」と首根っこを掴むが、三井組番頭・三野村利左衛門(イッセー尾形)に「これでは徳川時代と変わらない」といわれ、心を揺さぶられるのであった…
ということで、
第31回「栄一、最後の返信」の感想
今回も素晴らしかったですね。
大内くにさんが現れた時の必死な様子。
それを許す千代さん。
正妻と妾が同居するなんて現代では全く考えられないことですし、千代さんは相当苦しい心境だったとは思います。
しかし、戦前まで妾(側室)文化のあった日本では、妾を作ることは世間的にそう批難されることではなかったようです。
※だからといって、正妻が快く妾の存在を受け入れていたわけではなかったようです。
側室問題で苦労した人についての記事:
徳川家康の生涯を貫く思想―山岡荘八『徳川家康』第4巻
※ちなみに、ドラマ中では触れられていなかったと思いますが、渋沢「中の家」を継いだ渋沢市郎こと須永才三郎は、須永伝蔵(萩原護)さんの弟で栄一やていの従兄弟です。
そして喜作の生還は、わかってはいたけどまた泣きそうになりました。
生きていてよかった。
いやほんとに。
血洗島でともに尾高新五郎惇忠(田辺誠一)の下で学び、剣術を鍛え、ともに一橋家へ仕官し、歩んできた従兄。
渋沢平九郎昌忠(岡田健史)や尾高長七郎弘忠(満島真之介)を失った二人にとってお互いは、幼少期から支え合い、切磋琢磨してきた大切な友人であり、親族ですからね。
渋沢平九郎の死:
『青天を衝け』第25回―貨幣経済とは?
尾高長七郎の死:
『青天を衝け』第26回―高松凌雲について
また、当の惇忠も富岡製糸場で生き生きと働いていてよかったですね。
前回も書きましたが、くすぶっていた才能をやっと発揮することができてほっとしました。
それと、学校で習った富岡製糸場の初代場長が渋沢栄一の親族だなんて、このドラマを観始めるまで知りませんでした。
実は、僕は随分昔に中公新書の『渋沢栄一』を読んでいるのですが、そんなこと書いてあったかな?
※覚えていなかっただけかもしれません。
↓こちらの本です。
渋沢栄一―民間経済外交の創始者 (中公新書)
自らの使命を全うするため、愛娘に工女の第一号になってもらった惇忠はかっこよかったですね。
※「自己犠牲」を礼賛しているわけではありません。現にゆう(畑芽育)は「犠牲」にはなってませんからね。
最後は栄一の「合本」の話。
利左衛門に「徳川時代と同じ」と指摘された栄一のショックは計り知れなかったでしょうね。
これ、「立場が変われば態度や性格・意見が変わる」という現象のいい例ですね。
人間には確固たる性格や意見などはなく、立場や環境がそれらを作っています。
賢い人は、自分の求める性格や意見をキープできるよう、立場や環境を調整します。
第31回のヒント―井上家について―
今回は、新政府内の「活火山」で、維新志士にしては珍しい「名門」の出である井上聞多馨の井上家について書こうと思います。
※演じていらっしゃる福士誠治氏は『TNG パトレイバー』にも出演されています。
関連記事:
実写化の悪評を覆した作品―『THE NEXT GENERATION パトレイバー』(シリーズ特別編)
毛利ファンの人はピンときますよね?
毛利家臣の「井上」といえばあの人ですよ。
井上河内守元兼です。
大河ドラマ『毛利元就』では片岡鶴太郎さんが演じ、若き毛利少輔次郎元就を支えた重臣です。
しかし後に、専横を咎められて粛清されてしまったんですね。
残念ながら井上聞多は河内守元兼の末裔ではありませんが、同じ安芸井上家の出身です。
その安芸井上家のルーツは信濃で、河内源氏の祖でもある兵部丞源頼信の子・井上三郎頼季の末裔です。
僕のブログを読み込んでいる方はここでピンときたかもしれませんが、あの「丹波の赤鬼」赤井悪右衛門直正の赤井家と同族ですw
参考記事:
『麒麟がくる』第41回―赤井悪右衛門について
関連記事:
『青天を衝け』第29回―伊藤博文について
また、北信濃で活躍した高梨家(※)や保科左中将正之、保科俊太郎につながる保科家とも同族です。
※『真田丸』に登場した「きり」は高梨家の出身といわれています。
関連記事:
『青天を衝け』第22回―保科俊太郎について
関連記事:
『真田丸』、伊達政宗の天下取り(第49回)
関連記事:
『真田丸』、今回は悪くない(第40回)
その信濃井上家が安芸に渡り、その子孫が上記・井上河内守元兼や井上聞多なんです。
聞多は河内守元兼の叔父・光貞の末裔に当たります。
ただ、男系の子孫ではなく聞多の父・井上五郎三郎光亨は棟居家の出で、井上家の婿養子となっています。
聞多の母がこの光貞の末裔に当たります。
そしてこの「光貞」という名前が気になった方もいらっしゃると思います。
そう、歴史学者の井上光貞氏ですね。
この井上光貞氏はなんとこの系統の井上家の出、どころか井上聞多馨の孫にあたる方なんですね。
さらにさらに、内閣総理大臣を務めた桂太郎清澄の孫にもあたります。
毛利家臣のサラブレッドだったんですね。
僕も今回知って、衝撃を受けていますw
こんな感じで、ドラマの背景にある知識が分かるとドラマをもっと楽しめます!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
以下もご覧ください!
※トップ画像はイメージです。
○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・渋沢 市郎右衛門(元助) 源 美雅
・渋沢 栄一(篤太夫、栄二郎、栄一郎) 源 美雄
・渋沢(須永) 市郎(才三郎) 源 (諱不明)
・渋沢 喜作(成一郎) 源 英明
・大久保 一蔵(正助) 藤原 利通(利済)
・岩倉 (官職・通称不明) 源 朝臣 具視
・西郷 吉之助(善兵衛、吉兵衛) 藤原 隆永(隆盛)
・大隈 八太郎 菅原 朝臣 重信
・井上(志道) 聞多(文之輔) 源(大江) 惟精(馨)
・三野村(関口、木村、美野川) 利左衛門(利八) (氏不明) (諱不明)
・須永 伝蔵(於菟之輔) (氏不明) 通貞
・尾高 新五郎 (氏不明) 惇忠
・渋沢(尾高) 平九郎 源 昌忠
・尾高 長七郎 (氏不明) 弘忠
・井上 河内守(通称は弥坂兵衛) 源 朝臣 元兼
・毛利 陸奥守(通称は少輔次郎) 大江 朝臣 元就
・兵部丞 源 朝臣 頼信
・井上(乙葉) 掃部助(通称は三郎) 源 朝臣 頼季
・赤井(荻野) 悪右衛門 源 直正
・保科 左近衛権中将 源 朝臣 正之
・保科 俊太郎 源 正敬
・井上 (通称・官職不明) 源 光貞
・桂 太郎 大江 清澄
☆武家の「通称」の普及を切に願います!
参考
ゆーくんはどこ?
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次回は「大坂夏の陣に学ぶ」。
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Too Far Away / Stoning Crows
※筆者は右側でギターとコーラスを担当しています。
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Posted by 鷲谷 城州 at 20:00│Comments(0)
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