2021年03月08日
戸次川の戦いに学ぶ―逸って決断してはいけない

Alek AuddyによるPixabayからの画像
皆さんこんばんは。
今回は「ビジネスに活かす戦国合戦術」第40弾として、「戸次川の戦い」について、ビジネス的視点で学んでいこうと思います。
※『歴史と旅』増刊「日本合戦総覧(昭和63年1/10臨時増刊、秋田書店)」の今野信雄氏の記事をベースに他ブログさんの記事などを参考にさせていただいております(下記)。
時間に迫られている時ってありますよね。
締切間近等で急いでいる時は自分ひとりの問題だったりするのでまだましですが、お客さんに急かされている時は焦りますよね。
「今すぐ結論を出してもらわないと困る」
「明日になっても意味がない。今日結論をくれ」
等と言われている状況です。
こういった時、どうしますか?
また、営業手法のひとつとして「急かす」という技があります。
「このキャンペーン、今日までなんですよ」
「他にもこの物件を見学に来られた方がいて、明日にでも申し込みが入りそうです」
「残り3つしかないんで、買うなら今日ですよ」
等々。
今回は、こういった「気が逸る」状態で決断をミスした武将・仙石越前守秀久のお話です。
<戸次川の戦いまでの流れ>
天正13(1585)年の九州は、薩摩の島津家が龍造寺家を降し筑後に進出したことによってほぼ独り勝ちの様相を呈しており、大友家は存亡の危機に立たされていました。
関連記事:
ビジネスに活かす戦国合戦術③沖田畷の合戦
これに危機感を感じた大友宗麟は関白内大臣(以降「内府」)羽柴秀吉に援軍を依頼したのです。
大友家の祖について触れている記事:
『麒麟がくる』第28回―摂津晴門とは何者?
大友家関連の戦い:
ビジネスに活かす戦国合戦術②耳川の合戦
同上:
ビジネスに活かす戦国合戦術①今山の合戦
一宮城の戦いにより長宗我部宮内少輔元親(以下「宮内」)を降した羽柴内府は、これを受けて大友・島津の両家に停戦命令を出しましたが、島津家はこれを聞き入れず、北九州侵攻を続行しました。
関連記事:
一宮城の戦いに学ぶ―キレた勢いで行動してはいけない
天正14(1586)年7月、島津家がついに筑前に進出したため内府は九州平定を決定し、黒田官兵衛孝高と毛利勢・四国勢に九州への渡海を命じました。
<戸次川の戦い>
四国攻めの功を賞された羽柴家臣・仙石越前守秀久は、讃岐国十河城を領した十河孫六郎存保(三好義堅)の領地を除いた讃岐一国を与えられました。
九州平定戦では十河家、長宗我部家等四国勢を率いて軍監として豊後に上陸しました。
天正14(1586)年12月、島津家は豊後にも侵入しており、大友家領・鶴ヶ城(鶴賀城)を攻めていました。
鶴ヶ城は今にも落城しそうな状況であり、救援がなければ落城するのは時間の問題でした。
しかし仙石越前は、主君である羽柴内府から本隊の到着まで先端を開かないよう厳命を受けていました。
越前は、このまま鶴ヶ城が落ちるのを見殺しにするか、命令違反をして鶴ヶ城を救うかの二択を迫られます。
仙石越前、十河孫六らは出陣を主張し、長宗我部宮内は援軍が到着するのを待ってから打って出るべしと主張しましたが、結局羽柴家臣である仙石越前の意見が通り、諸将は戸次川に陣を布くこととなりました。
戸次川の渡河作戦を開始した四国連合軍の攻勢に島津勢はたまらず後退します。
島津軍を追撃していた仙石越前は異変に気付きます。
後退していた島津軍が突如後退を止めたため、いぶかしんでふと周りを見ると島津家の大軍に囲まれていたのです。
島津家お得意の「釣り野伏」の戦法に見事にはまったのでした。
関連記事:
ビジネスに活かす戦国合戦術②耳川の合戦
仙石越前隊は不意を衝かれた拍子に一気に崩れ敗走。
十河孫六は討ち死にし、長宗我部宮内の嫡子・弥三郎信親は父・宮内を退却させるために奮戦しますが、こちらも敵わず討死しました。
長宗我部宮内は伊予・日振島に逃げるも、嫡子・弥三郎が戻ってこないことに落胆し、以後、意欲を失い凋落していきます。
仙石越前は命令違反をしたこと、四国勢を差し置いて真っ先に逃走したこと、九州で踏ん張らず、すぐに讃岐に退却してしまったことを咎められ改易されます。
<逸って決断してはいけない>
今回は仙石越前の敗因を教訓にしたいと思いますが、その敗因はやはり「決断ミス」ですね。
長宗我部宮内の「援軍を待ってから打って出るべし」という慎重論を容れていれば、小勢で島津軍に向かうことはなく、「釣り野伏」に引っかかる可能性も低かったと思われます。
では、なぜ仙石は決断ミスをしたのか?
様々な要因が考えられますし本当の理由は本人しかわからない、いや、本人にもわからないかもしれませんが、当時の状況を想像して仙石の心境を洞察してみましょう。
当時の仙石は四国攻めで大成功して、讃岐一国を手に入れて、歴戦の長宗我部軍等を率いての九州出陣ということで、イケイケ状態な訳です。
(もちろんプレッシャーもあったと思いますが)
「軍監」、つまり戦目付の役割ではありますが、部隊中で唯一の羽柴家直臣なのですから、実質的に仙石が大将となる訳です。
ここでもし援軍として黒田官兵衛や羽柴中納言秀長、羽柴内府の本隊等が来てしまったら、自分は大将ではなくなる訳です。
手柄も目減りするかもしれません。
だったら、たとえ命令違反だったとしても援軍が来る前に島津家をやっつけちゃった方が得策じゃないか?
こういった、功名心からくる焦りもあったと思います。
また、当時鶴ヶ城からは守将の利光宗魚から援軍依頼の手紙が続々と届いていたようです。
上にも書きましたが、鶴ヶ城は今にも落城しそうな状況です。
当時、羽柴内府は大坂を出てすらいなかったので、内府の到着を待っていれば確実に鶴ヶ城は落城します。
そんな状況下だったので、「なんとかしなきゃやばい!」という焦りの気持ちもあったのかもしれません。
安土桃山時代の合戦と考えると想像しにくいかもしれませんが、自分の身近なシチュエーションに置き換えて想像してみるとわかりやすいと思います。
上司の出張中、お客さんに決断を迫られている状況を想像してみましょう。
一応自分に決裁権はありますが、一言上司に相談する必要があるレベルの決断です。
上司は移動中なのか、連絡が取れません。
お客さんは、「今すぐ決断してくれなきゃ困る。今回の話はなかったことにさせてもらう」と息巻いています。
そんな中、正常な決断ができるでしょうか?
おそらく、ほとんどの人は気が逸ってしまって正常な決断ができないのではないでしょうか?
もし、ここでそのお客さんを蹴って上司の結論を待っていたらそのお客さんは離れてしまい、そのことで叱責を食う可能性もある訳です。
こういった場合、どの決断が最適かは状況によるので一概に言えないのですが、ある程度こういった事態が起こることを想定しておく必要があります。
行動指針を決めておくんです。
「上司不在であっても、上司の承諾がなければ決断しない」
等の指針を決めておいて、あらかじめ上司にそれを話しておきます。
そうすれば、たとえその場の判断を間違ったとしても、上司はそんなに怒らないはずです。
自分はあらかじめ相談を受けており、その方針に同意しているのですから。
気が逸った状態で、焦って下す決断は大抵間違っています。
焦ってから決断を下すのではなく、冷静な時に判断基準を作っておくことが肝要です。
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天目山の戦いから学ぶ―撤退のベスト・タイミングとは
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合戦における戦術について⑥川中島の合戦
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ということで、今回は「逸って決断してはいけない」ということについて説明させていただきました。
まだまだ説明したいことはたくさんありますが、今回は以上です!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
以下もご覧ください!
○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・仙石(千石) 越前守(通称は権兵衛) 源(藤原) 朝臣 秀久
・大友 左衛門督(通称は新太郎) 藤原(源) 朝臣 義鎮(宗麟)
・関白 羽柴(木下) 内大臣(通称は藤吉郎) 豊臣(平) 朝臣 秀吉
・長宗我部 宮内少輔(土佐守。通称は弥三郎) 秦 朝臣 元親
・黒田 官兵衛 源 孝高(祐隆、好高、孝隆)
・十河(三好) 孫六郎(三郎。官職は民部大輔) 讃岐(源) 朝臣 存保(正安、政泰、存康、義堅)
・長宗我部 弥三郎 秦 信親
・羽柴(木下) 中納言(通称は小一郎) 豊臣(平) 朝臣 秀長(長秀)
・利光 越前守(通称不明) 藤原 朝臣 鑑教(宗魚)
☆武家の「通称」の普及を切に願います!
参考
事代主のブログ
袖鏡
お寺さんぽ Ver.03
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Posted by Sosuke Washiya at 20:00│Comments(0)
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