2019年09月11日
耳川の合戦ー諍臣を愛せ
Alek AuddyによるPixabayからの画像
《令和6年9月26日更新》
皆さんこんばんは。
今回は新シリーズ「ビジネスに活かす戦国合戦術」第2弾として「耳川(みみかわ)の合戦」について書きます。
※記事下部に武家や公家の人物名の読み仮名を載せています。
【これまでの記事】 | |
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・第1回 今山の合戦 |
『歴史と旅』増刊「日本合戦総覧(昭和63年1/10臨時増刊、秋田書店)」の小石房子氏の記事をベースに他ブログさんの記事などを参考にさせていただいております(下記)。
ということで、
どういう合戦かというと、天正(てんしょう)6年(1578年)に日向(ひゅうが)の高(たか)城〔現在の宮崎県児湯郡木城町(みやざきけん・こゆぐん・きじょうちょう)〕から耳川〔同日向市〕にかけて大友義鎮と島津義久の間に行われた合戦です。
島津家についてもっと知りたい方は、下記リンクをタップしてください:
沖田畷の合戦―「確実な勝利」を疑うべし
同関連記事:
『青天を衝け』第14回―島津家について
合戦前夜の事情としては、戦国(せんごく)時代に南日向を支配した伊東義祐は島津(しまづ)氏の猛攻に次第に圧迫され、天正5年(1577年)に大敗して豊後(ぶんご)に敗走します。
大友義鎮は伊東(いとう)氏と縁戚(えんせき)関係にあったこともあり、義祐の要請を受け、日向へ出陣します。
北日向の土持(つちもち)氏(※)を降した義鎮は軍をそのまま南下させ、島津家の拠点高城攻略を目指します。
※『西郷どん』に登場した土持政照と同族と思われます。
大友家関連の記事:
『青天を衝け』第26回―高松凌雲について
同関連記事:
戸次川の戦いに学ぶ―逸って決断してはいけない
土持家関連の記事:
『西郷どん』第21~25回―戦慄の寺田屋
ここからが今回のテーマ「耳川の合戦」です。
義鎮は田原親賢〔紹忍〕に2万の兵を預けて高城攻めを命じます。
一方の高城の島津勢は山田有信と島津家久の兵3,000。
そのうちに大友勢に援軍が到着して総勢6万(5万という説もあり)。
島津勢にも援軍として当主義久やのちの惟新入道島津義弘も到着して義久は根白坂(ねじろざか)に陣取り、義弘は近くの財部(たからべ)城に入り、総勢5万。
戦場には11万の兵がおり、大合戦が予想されるも、義弘は小勢を大友方の佐伯惟教〔宗天〕と田原親賢の間に配置し、佐伯惟教に奇襲をかけます。
義弘の本隊もこの奇襲に加わり大友方は大敗します。
これにより退却へ決しかけた大友方ですが、一人田北鎮周のみ抗戦を主張し、勝手に出陣してしまいます。
佐伯惟教は退却派でしたが、状況的に戦うしかなくなり、鎮周と惟教の部隊は島津家の「釣り野伏(つりのぶせ)」にやられて壊滅。
残兵は北を目指し敗走しますが、島津家は大友家の勢力圏との境である耳川まで追撃を続け、大友家は多くの犠牲を出しながら耳川を渡りました。
合戦の流れとしてはこんな感じですが、今回は「勝因」というよりも、大友勢が勝手に負けた感じですね。
強いて勝因を挙げれば
・碁石を並べるように部隊を配置していった俯瞰(ふかん)力
・冷静に状況を見て「奇襲」や「釣り野伏」などの作戦を選択した判断力
とかになりますが、今回は大友勢の敗因にフォーカスしましょう。
碁石戦略関連記事:
第二次高天神城の合戦-勝者の戦法を徹底的にトレースせよ
関連記事:
二俣城の合戦―「見る」のではなく「観る」
大友家の敗因は
・総大将である大友義鎮不在による士気の低さ、判断力の弱さ
ですね。
結局のところ、義鎮が戦場にいなかったことで大友勢は士気が奮わず、なおかつ緒戦で負けたときにも「殿にご意向をうかがう」という理由で退却に決定したのですが、田北鎮周はそれに納得できなかったんですね。
義鎮がいたら違ったと思います。
で、肝心の義鎮は何をやっていたかというと、土持氏から奪い取った日向無鹿(むしか)にて神社仏閣を焼き払い、キリスト教の理想郷を作ろうとしていたんです。
実はこの行動も家臣たちの反発を買っておりまして、それも士気低下の要因だったりもします。
だから、この大友義鎮の行動をビジネスになぞらえると、
・社長の理想と社員の気持ちの乖離(かいり)による士気の低下
ですかね。
これ、日常的に結構起こってますよね。
社長は仕事の前線を知らないので本で読んだりコンサルタントの無責任な助言をもとに机上の空論を標榜するわけですね。
社長の一言ですから、社員は「それは空論です」という反論ができない。したとしても社長に強引に押されたら誰も逆らえません。
そして、社長も一応それが何で必要なのか説明するのですが、あまりに前線の現実と乖離しすぎていて社員は誰も聞いちゃいない。
理解する気もない。
で、社員が無理解であるのに社長は強引に空論を推し進めるのですが、社員はやる気がないのですから当然いい結果は出ない。
こうやって社長のワンマン経営の中小企業は敗戦を重ねていくわけですね笑
だから教訓としては、今回は社長目線ですが、
・思いついた経営戦略が実情に合っているのか、現実的なのかをきちんと検証する。
・自分の戦略に率直な意見を述べられるようなブレーンを作る
ということになりますかね。
人は皆他人に反対意見を言われるのが嫌いですから、口うるさいブレーンを置くのを嫌がります。
しかし、それが衰退の始まりです。
人としてもね。
今回は以上です!
次回の記事を読みたい方は、下記リンクをタップしてください:
沖田畷の合戦―「確実な勝利」を疑うべし
※画像はイメージです。
○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・大友 左衛門督〔通称は新太郎〕 藤原〔源〕 朝臣 義鎮〔宗麟〕
おおとも さえもんのかみ〔通称はしんたろう〕 ふじわら〔みなもと〕 の あそん よししげ〔そうりん〕
・島津 修理大夫〔通称は三郎左衛門尉〕 惟宗〔源〕 朝臣 義久〔龍伯〕
しまづ しゅりのだいぶ〔通称はさぶろうざえもんのじょう〕 これむね〔みなもと〕 の あそん よしひさ〔りゅうはく〕
・伊東 大膳大夫〔通称は六郎五郎〕 藤原 朝臣 義祐
いとう だいぜんのだいぶ〔通称はろくろうごろう〕 ふじわら の あそん よしすけ
・田原 近江守〔通称不明〕 藤原〔源〕 朝臣 親賢〔紹忍〕
たわら おうみのかみ〔通称不明〕 ふじわら〔みなもと〕 の あそん ちかかた〔じょうにん〕
・山田 越前守〔通称は新介・新助〕 平 朝臣 有信
やまだ えちぜんのかみ〔通称はしんすけ・しんすけ〕 たいら の あそん ありのぶ
・島津 中務大輔〔通称は又七郎〕 惟宗〔源〕 朝臣 家久
しまづ なかつかさのたゆう〔通称はまたしちろう〕 これむね〔みなもと〕 の あそん いえひさ
・島津 兵庫頭〔通称は又四郎〕 惟宗〔源〕 朝臣 義弘〔惟新〕
しまづ ひょうごのかみ〔通称はまたしろう〕 これむね〔みなもと〕 の あそん よしひろ〔いしん〕
・佐伯 紀伊守〔通称は太郎〕 大神 朝臣 惟教〔宗天〕
さえき きいのかみ〔通称はたろう〕 おおが の あそん これのり〔そうてん〕
・田北 相模守〔通称は弥十郎〕 藤原〔源〕 朝臣 鎮周
たきた さがみのかみ〔通称はやじゅうろう〕 ふじわら〔みなもと〕 の あそん しげかね
☆武家の「通称」の普及を切に願います!
参考
お城散歩
しばやんの日々
まーりたんの暮らし探訪記
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次回は「仕事はすべてまともにやろうとすると絶対に終わらない」。
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今期イチオシ曲!ぜひ聞いてください!
【Cover】Nowhere Man / Joshu Washiya
※The Beatlesの楽曲のカバー。ボーカル・コーラスは筆者の声。楽器隊は打ち込みですが、機材が整い次第自分で演奏する予定です。
第二次国府台合戦に学ぶ―小さな勝ちに酔わない
大坂夏の陣に学ぶ―覚悟して手放す
大坂冬の陣に学ぶ―自分のプライドを自分でたたき折る
長谷堂城の戦いに学ぶ―算盤勘定をもつ
安濃津城の戦いに学ぶ―小さな局面での勝敗に捕らわれない
田辺城の戦いに学ぶ―不都合な現実を直視する
大坂夏の陣に学ぶ―覚悟して手放す
大坂冬の陣に学ぶ―自分のプライドを自分でたたき折る
長谷堂城の戦いに学ぶ―算盤勘定をもつ
安濃津城の戦いに学ぶ―小さな局面での勝敗に捕らわれない
田辺城の戦いに学ぶ―不都合な現実を直視する
Posted by 鷲谷 城州 at 22:00│Comments(0)
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