2020年03月25日
夏目漱石『こころ』におけるKの寿命問題
mi-Lifeさんによる写真ACからの写真
皆さんこんばんは。
今回は記事「『初めからKが死んでいた』教科書の難易度によって、夏目漱石『こころ』の本文="Kの寿命"が削られる→皆さんのKの寿命情報が続々と」を読んでの所感です。
夏目漱石に興味のある方は、下記リンクをクリックしてください:
夏目漱石『道草』
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夏目漱石『倫敦塔・幻影の盾』
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夏目漱石『二百十日・野分』
記事概要。
割と多くの高校の教科書に教材として採用されている夏目漱石の名著『こころ』。
登場人物である「K」は下宿先の「お嬢さん」にひそかに恋をし、それを友人である「先生」に伝えます。
実は「先生」も「お嬢さん」に恋心を抱いており、「先生」は「K」を出し抜いて先に「お嬢さん」に想いを告げ、婚約してしまいます。
(※当時(大正初期)の恋愛の仕方、特に書生と呼ばれるエリート学生たちの恋愛の仕方は今とはだいぶ違いますので、注意が必要です。
『こころ』の場合も現代のように直接「お嬢さん」に告白して、付き合い始めて、その後時が経って結婚、というステップを踏みません)
「K」はそのことを苦にして自殺してしまうのですが、この自殺の場面に至るまでの抜粋箇所の長さが教科書によって違う、という話です。
(教科書によっては「K」の死後から抜粋が始まるようです笑)
この記事の観点自体は面白いと思ったのですが、これに加えて僕は別の観点で少し気になるところがあります。
なぜ教科書よって抜粋箇所が変わるという現象が起こるのか、ということだけではなく、なぜ夏目漱石の『こころ』を教科書に載せるのか、ということです。
それって、国語教育全体の在り方にかかわってくる話だと思うんですよ。
多くの人が国語教育の仕方をわかってないのではないでしょうか?
教科書を作っている人は何がしたいのか?
これに尽きますね笑
僕自身は7年半ほど塾で国語を教えていた経験があるので、ある程度教育者の程度や状況はわかっているつもりです。
そして、そのころいつも感じていたことでもあります。
国語教育の目的って色々あると思うんです。
思いつく限りでは、
①文字の読み方から始まる文法などのテクニカルな要素を身に着ける
②論理的な読み取り方と論理的文章の作り方を身に着ける
③表現の仕方によって読み手の印象が変わる、という文学的アプローチを知る
④過去の様々な名作に触れ、教養を広げるきっかけを作る
⑤入試に受かること
くらいでしょうか。
まぁ、教科書そのものや文科省の指導要綱に目的は書いてあるはずなのですが、おそらく上の項目は網羅されているはず。
ここで疑問に思うのが、教科書を作っている人は上のどれに重点を置きたいと思っているのか、ということです。
『こころ』は小説ですので③④あたりに重点が置かれているのかなと思います。
しかしですよ。
今の状態では③も④も達成できていないと思うんですよ!
教育者は本当に文学的造詣が深いのか疑問
そもそもが、小説家の作品を部分的に抜粋して教材として扱う時点で文学教育としては目的が達成できていません。
限られた時間の中で『こころ』の物語をすべて取り扱うわけにはいかないのもわかります。
高校生という、まだ多くは専門的分野に足を踏み入れていない生徒たち、自ら進んで国語を勉強しているわけではない生徒たちを相手にする、という事情もわかります。
ただ、教える人間、教科書を作る人間は、夏目漱石に限らず文学的表現についての研究はしておくべきだと思うんですよ。
(もちろんとっくに研究されている方もいると思います)
教える側に深い教養があるからこそ、表面的な内容をなぞるにしてもその奥にある深みを暗示できるわけで、奥に深みのない人間が国語を教えたってなにも教えることができないと思うんですよ。
『こころ』ってなんですか?
ただの恋愛小説ですか?
後味の悪いクソ小説ですか?
違いますね。
僕は夏目漱石が好きで、全作品を読んだのはもちろんのことですが、自分なりの作品分析もしているつもりです。
この作品は何を伝えたくて書いたんだろう?
この作家は何を考えていたんだろう?
なぜこの題名なんだろう?
そういうことを考えたことのない人に国語を教える資格はないと思っています。
※下記夏目漱石『こころ』パーフェクトガイドさんの解釈は非常に面白かったのでお勧めです!
「名作の紹介」という目的も達成できていない
夏目漱石をよく知らない人が『こころ』の一場面を読んで興味もつと思いますか?
(僕自身は中学生のころから夏目漱石が好きで読んでいたので、「よく知らない人」の感覚とは少しずれていました)
僕は「Kの自殺」という気分の悪い展開が嫌いではないのですが、普通は距離を置きますよ。
大抵の人は「夏目漱石は有名だけど何書いてるかわかんない」、「ストーリーがよくわかんない」と思っていると思うんですよ。
そりゃそうですよ。
わかりやすい起承転結の昔話を書いているわけではないんですから。
「文学」ってそういうもんなんですよ。
人間の精神活動を物語を通して表現しているものです。
特に明治~大正時代の日本は「自我」の輸入が起こっていた時代なので、夏目漱石などのエリートたちは西洋から学んだ「自我」の概念などを作品を通して表現しようとしていました。
そういう視点をもっていると漱石作品というのは非常に面白いです。
しかし、ただの表面的な「物語」「ドラマ」としてとらえていると訳がわからないんですよ。
ほとんどの小説はただの日常を描いているだけですから。
劇的な展開なんてこの『こころ』の「Kの自殺」くらいなもので、他は平々凡々としてますから。
なのに、無用に難解な書き方なので理解できないわけですね。
だから夏目漱石を紹介したいのなら、ひねりはありませんが『吾輩は猫である』の軽妙な描写を紹介していればいいんです。
なのに『こころ』をもってくるもんだから、ほとんどの人が「訳が分からない」と処理して終わります。
(高校生だから恋愛に関して琴線が敏感だろうという推測でもあるんでしょうかね。
教えている人間、教科書を作っている人間の頭の方が軽薄です)
まとめ
というわけで、『こころ』の抜粋箇所の謎はおそらく教えている側、教科書を作っている側の迷走に原因があるのではないかと思います。
「国語を通して何を教えるか」という方向性の統一化が図れてないんですよ。
てんでバラバラで、各々が勝手に教えたいことを教えているだけ。
しかもその「教えたいこと」も大して深みのないことだから、国語教育の時間の多くが無駄な時間となっています。
勉強しましょうよ。
そして、国語という業界全体で意見交換をして、方向性の統一をしましょうよ。
こんな状況だから「現代文」は舐められるんです。
今回は以上です!
※トップ画像はイメージです。
参考
『こころ』執筆の背景を当時の世界の心理学研究に求めるなど、新しい視点に感嘆しました!
夏目漱石『こころ』パーフェクトガイド
柿沢謙二ブログ
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Posted by 鷲谷 城州 at 21:00│Comments(0)
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