『麒麟がくる』第29回―押領とは何か
第29回「摂津晴門の計略」の感想
いやぁ、前回も書きましたが、摂津晴門の悪役っぷりは素晴らしいですね!
信長に不満をもつ寺社の訴えをきき、金子(きんす)を受け取って懐に入れ、将軍家義昭をいいように操り、寺社領や帝の御料地を押領して私腹を肥やす…
絵にかいたような悪逆っぷりでたまりません。
これほどの悪役が信長にやられることを想像するとわくわくしますねw
摂津晴門のやられっぷりを知りたい方は、下記リンクをタップしてください:
『麒麟がくる』第35回―細川藤孝について
関連記事:
『麒麟がくる』第28回―摂津晴門とは何者?
後は木下藤吉郎秀吉(佐々木蔵之介)の怪しさもいいですね。
十兵衛が前久と会ったことを知っている…というねちっこさもたまりません!w
関連記事:
『麒麟がくるまでお待ちください』第4回―羽柴藤吉郎の名称
そして、幕府役人の腐敗によって義昭と信長が対立していく、という展開が新しくて素晴らしいです!
とても面白い回でした。
第29回の楽しみ方―押領とは何か―
今回は寺社領や帝の御料地が幕府役人等に押領されていることが大きなテーマとなっていましたが、なぜそのようなことになったのか、という説明をしたいと思います。
そもそも、寺社や帝の御料地となった土地はどんな土地かというと、それは元々は「荘園(しょうえん)」です。
社会の教科書に載っていたと思うのですが、天平(てんぴょう)15年(743年)に発布された「墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいのほう)」を根拠に、開墾(かいこん)した土地を私有地としたことで公家(くげ)や寺社・帝は多くの荘園を所有するようになりました。
武士とは元々、中央にいる公家等の領主の所有する荘園の防衛をつかさどったりしていました。
※令和4年2月18日注:武士の成立には諸説ありますが、ここでは有力な説を採用しています。
平安(へいあん)時代の終わりごろには武士団(ぶしだん)の棟梁(とうりょう)たちが、反乱を起こして討伐された人々や失脚した人々の荘園を恩賞として手に入れ、武士自身が領主となっていきました。
鎌倉(かまくら)時代頃には武家の棟梁である鎌倉将軍家が配下の御家人(ごけにん)たちに荘園を恩賞として与えるなどしたため、御家人たち自身も荘園を所有するようになり、地頭(じとう)として各地に派遣されていきました。
南北朝(なんぼくちょう)時代になると南北朝の動乱や観応の擾乱(かんのうのじょうらん)などで室町(むろまち)幕府そのものの所有地が少なくなり、御家人たちに十分な土地を与えられませんでした。
これら相次ぐ内乱のため守護(しゅご)たちは各地で敵対勢力と戦闘をする必要がありましたが、その軍費を賄うため、室町幕府は「半済令(はんぜいれい)」という法令を発布しました。
このことにより、守護は国内の荘園・公領(こうりょう)の年貢(ねんぐ)の半分を徴収する権利を手に入れます。
※守護は国内を「領国(りょうごく)」化することになり、後に鎌倉時代の守護と区別して「守護大名(しゅごだいみょう)」と呼ばれるようになります。
この頃はかろうじて寺社や帝は自分たちの荘園から多少の収入を得ていたのですが、大きな契機となったのは応仁(おうにん)元年(1467年)の応仁の乱です。
日本全国で室町幕府の支配力が弱まり、現地の武士たちが寺社領・帝の御料地に侵入して、武力を背景に年貢をすべて奪う、つまり「押領」するようになったわけです。
しまいには彼らは室町幕府の領地にも「押領」を行い、幕府そのものの収入も減少していきました。
ドラマで描かれていたのは、こうした武力を背景とした「押領」によって手に入れた土地を、摂津晴門らが自分たちのものにしていたり、恩賞として幕臣に与えていた、という内容です。
※史実としては摂津晴門がそうしたことを行っていたという記録はありません。
大きな問題ですよね。
比叡山延暦寺(ひえいざん・えんりゃくじ)や大和(やまと)の興福寺(こうふくじ)のように「僧兵(そうへい)」という武力をもっていた寺社は自分たちの領地を保つ、もしくはより強大になっていきましたが、武力をもたない寺社や公家・帝らはどんどん困窮していきました。
戦国大名や国人領主たちは戦いによって土地の奪い合いをしていましたが、その土地の中には彼らが武力で寺社・公家・帝・幕府から奪ったものも含まれていたわけです。
当時の天下人(てんかびと)には、これらの「押領」された土地をどう扱うか、という課題もあったわけです。
こんな風に、ドラマの背景にある知識が分かるとドラマをもっと楽しめます!
というわけでまだまだ説明したいことはたくさんありますが、今回は以上です!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
以下もご覧ください!
※トップ画像はイメージです。
○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・征夷大将軍 足利 左馬頭〔通称不明〕 源 朝臣 義昭〔義秋、一乗院覚慶〕
せいいたいしょうぐん あしかが さまのかみ〔通称不明〕 みなもと の あそん よしあき〔よしあき、いちじょういんかくけい〕
・織田 尾張守〔通称は三郎〕 平〔藤原、忌部〕 朝臣 信長
おだ おわりのかみ〔通称はさぶろう〕 たいら〔ふじわら、いんべ〕 の あそん のぶなが
・明智 十兵衛 源 光秀
あけち じゅうべえ みなもと の みつひで
・関白 近衛 左大臣〔通称不明〕 藤原 朝臣 前久〔晴嗣、前嗣〕
かんぱく このえ さだいじん〔通称不明〕 ふじわら の あそん さきひさ〔はるつぐ、さきつぐ〕
・朝倉 左衛門督〔通称は孫次郎〕 日下部 朝臣 義景
あさくら さえもんのかみ〔通称はまごじろう〕 くさかべ の あそん よしかげ
・摂津 掃部頭〔中務大輔。通称不明〕 藤原〔中原〕 朝臣 晴門〔晴直〕
せっつ かもんのかみ〔なかつかさのたゆう。通称不明〕 ふじわら〔なかはら〕 の あそん はるかど〔はるなお〕
・木下〔羽柴〕 藤吉郎 平〔藤原、豊臣〕 秀吉
きのした〔はしば〕 とうきちろう たいら〔ふじわら、とよとみ〕 の ひでよし
☆武家の「通称」の普及を切に願います!
参考
ゆーくんはどこ?
ぴえーるのテレビブログ
歴史上の偉人、有名人と子孫の大百科
☆「この人の書いてること、ちょっと面白いかも」と思った方はぜひメルマガ登録してみてください!
歴史を学んで、知識をつけるだけではなく「歴史を活かして自分の生きたい人生を歩む」というテーマで、ブログでは語れない裏話や秘話などをお届けします。
↓こちらの画像をタップしてください↓
また、メルマガに登録してメルマガに記載されているメールアドレス宛にリクエストを送っていただければ、順次お応えします。
・○○(武将、合戦等)について語ってほしい
・大河ドラマ(『軍師官兵衛』以降)について語ってほしい
・今、○○について悩んでいるが、どの武将を参考にしたらいいか
…等々
ブログと違ってほぼリアルタイム配信なので、会話をしているかのようなコミュニケーションが楽しめます!
登録、お待ちしています!
※メルマガが迷惑メールフォルダや「プロモーション」フォルダに入っている可能性があります。
不定期配信なので、ちょこちょこチェックして、迷惑メールフォルダ等に入らないように設定しておいてください。
自分が何のために生まれてきたのか?
疑問を感じることはありませんか?
このまま会社で仕事をして、会社に利益を吸い取られて、さらに
生命力をも吸い取られて生きていくのか?
と思うとげんなりしませんか?
筆者もこれまで「誰かの決めた人生」を歩んできて、望まない方向に人生が進み、これまで培ってきた能力を無駄遣いし、消耗しきった人生を歩んできました。
しかし、ある方と出会って「自分の人生の歩み方」に触れ、自分が本当は何を求めているのかを知ることができるようになりました。
最初はスピリチュアルな話については(スピリチュアルの分野のすべてがあやしいわけではありませんが)少々距離を置きながらメルマガを読んでいたのですが、
きちんと論理的な説明をされる方だったので、
今ではファンになって結局会いに行ってしまいましたw
(自分で言いますが、上記のようなブログを書いている僕が「論理的」というのだから、信じてくださいw)
とりあえず、他人に振り回されて疲れを感じた方は下記リンクをタップして一読してみてください。
【創造者としての目覚め】
それで、納得した方だけその先に進んでもらえば大丈夫です。
筆者はこのプログラムを作った方の主催するコミュニティに所属しているため、筆者と会ってみたい!という方も、つながりを作るきっかけの一つにはなりますので、ぜひ上のリンクをタップしてみてください!
※メルマガ登録をされた場合、初回メールが迷惑メールフォルダに自動振り分けされる可能性があるので、お気をつけください。
↓時代背景のイメージを感じられたかなと思ったら、下記リンクをタップしてドラマガイドなどを購入して、ぜひドラマの内容を復習してみてください!
麒麟がくる 後編 (2) (NHK大河ドラマ・ガイド)
NHK大河ドラマ「麒麟がくる」オリジナル・サウンドトラック Vol.2
2020年NHK大河ドラマ「麒麟がくる」完全読本 (NIKKO MOOK)
NHK大河ドラマ歴史ハンドブック 麒麟がくる: 明智光秀とその時代 (NHKシリーズ NHK大河ドラマ歴史ハンドブック)
/
記事を読んでいただき、ありがとうございました!他の記事もぜひご覧下さい。
次回は『麒麟がくる』第30回について。
//
今期イチオシ曲!ぜひ聞いてください!
【Cover】Nowhere Man / Joshu Washiya
※The Beatlesの楽曲のカバー。ボーカル・コーラスは筆者の声。楽器隊は打ち込みですが、機材が整い次第自分で演奏する予定です。
関連記事