『麒麟がくる』第29回―押領とは何か

鷲谷 城州

2020年12月06日 20:00


Kohji AsakawaによるPixabayからの画像
《令和6年9月12日更新》

皆さんこんばんは。
今回は今年の大河ドラマ『麒麟(きりん)がくる』第29回に関しての楽しみ方を解説したいと思います。

大河ドラマを見てみたけれど、歴史もよくわからないし、どう楽しんでいいのかわからない
歴史には興味あるけど、自分では積極的に勉強する気になれない、という方必見です!
※記事下部に武家や公家の人物名の読み仮名を載せています。


【『麒麟がくる』の楽しみ方】・第1~2回―当時の三傑と明智家/リアルな戦の描写・第3~4回―美濃の情勢/織田家の状況・第5~6回―当時の京都の情勢・第7~8回―尾張国内の政治情勢/当時の三河情勢・第9~10回―土岐一族とは/織田家の血縁関係・第11~12回―なぜ朽木谷か?/信長家臣団の萌芽・第13~14回―戦国最強の傭兵団/村木砦の戦い・第15~16回―織田一族の関係性/新九郎高政の重臣たち
・第17~18回―斎藤家の血族関係/永禄元年までの織田家・第19~20回―足利将軍家の動き/桶狭間の戦い・第21回―松平蔵人の親族・『麒麟がくるまでお待ちください』第2~3回―斎藤道三二代説/前田利家の生涯・『麒麟がくるまでお待ちください』第4回―羽柴藤吉郎の名称・総集編第1回・第22回―三好氏の血縁関係・第23回―三好氏の血縁関係(2)・第24回―剣豪の系譜・第25回―朝倉氏の系譜・第26回―摂関家の系譜・第27回―会合衆とは何者か?・第28回―摂津晴門とは何者?

まずはあらすじ。



第29回のあらすじ


永禄(えいろく)12年(1569年)、三好三人衆(みよし・さんにんしゅう)によって将軍家(しょうぐんけ)・足利義昭(滝藤賢一)の御座所(ござしょ)である本圀寺(ほんこくじ)が襲われたことを鑑みて、織田尾張守信長(染谷将太)は京都(きょうと)二条(にじょう)に新しく城を建設した。

その資材や調度品は周辺の寺社などから強制的に徴収されており、僧などからの不満が噴出していた。

そんな中、明智十兵衛光秀(長谷川博己)は伊呂波太夫(いろはだゆう)(尾野真千子)に呼び出されて前関白近衛前久(本郷奏多)と密会していた。

前久は、幕府(ばくふ)の役人(やくにん)たちが私利私欲しか顧みず、(みかど)がないがしろにされている現状を訴えた。

幕府の腐敗を認識した十兵衛は信長に改革を進言するが、信長は、それは幕府の家臣たる十兵衛の役目だという。
さらに、越前(えちぜん)の朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)が三好三人衆と通じて美濃に攻めてくる気配があると言って信長は岐阜(ぎふ)へ帰っていった。

十兵衛は京都に家族を呼び寄せるために新たに土地を拝領したが、その土地は東寺八幡宮(とうじはちまんぐう)の領地を押領(おうりょう)したものであることを知る。

事実を確かめるため、十兵衛は摂津掃部頭晴門(片岡鶴太郎)に真偽を糾すが、晴門はわからないという。
さらに、帝の御料地(ごりょうち)を押領していることについては「帝を守ってやっているのだから、謝礼代わりに押領するのは当然だ」と開き直る晴門。

十兵衛は、幕府役人のどうしようもない腐敗を痛感するのであった…

ということで、

第29回「摂津晴門の計略」の感想


いやぁ、前回も書きましたが、摂津晴門の悪役っぷりは素晴らしいですね!

信長に不満をもつ寺社の訴えをきき、金子(きんす)を受け取って懐に入れ、将軍家義昭をいいように操り、寺社領や帝の御料地を押領して私腹を肥やす…

絵にかいたような悪逆っぷりでたまりません。

これほどの悪役が信長にやられることを想像するとわくわくしますねw


摂津晴門のやられっぷりを知りたい方は、下記リンクをタップしてください:
『麒麟がくる』第35回―細川藤孝について

関連記事:
『麒麟がくる』第28回―摂津晴門とは何者?


後は木下藤吉郎秀吉(佐々木蔵之介)の怪しさもいいですね。

十兵衛が前久と会ったことを知っている…というねちっこさもたまりません!w


関連記事:
『麒麟がくるまでお待ちください』第4回―羽柴藤吉郎の名称


そして、幕府役人の腐敗によって義昭と信長が対立していく、という展開が新しくて素晴らしいです!

とても面白い回でした。



第29回の楽しみ方―押領とは何か―


今回は寺社領や帝の御料地が幕府役人等に押領されていることが大きなテーマとなっていましたが、なぜそのようなことになったのか、という説明をしたいと思います。

そもそも、寺社や帝の御料地となった土地はどんな土地かというと、それは元々は「荘園(しょうえん)です。

社会の教科書に載っていたと思うのですが、天平(てんぴょう)15年(743年)に発布された「墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいのほう)」を根拠に、開墾(かいこん)した土地を私有地としたことで公家(くげ)や寺社・帝は多くの荘園を所有するようになりました。

武士とは元々、中央にいる公家等の領主の所有する荘園の防衛をつかさどったりしていました。
※令和4年2月18日注:武士の成立には諸説ありますが、ここでは有力な説を採用しています。

平安(へいあん)時代の終わりごろには武士団(ぶしだん)の棟梁(とうりょう)たちが、反乱を起こして討伐された人々や失脚した人々の荘園を恩賞として手に入れ、武士自身が領主となっていきました。

鎌倉(かまくら)時代頃には武家の棟梁である鎌倉将軍家が配下の御家人(ごけにん)たちに荘園を恩賞として与えるなどしたため、御家人たち自身も荘園を所有するようになり、地頭(じとう)として各地に派遣されていきました。

南北朝(なんぼくちょう)時代になると南北朝の動乱や観応の擾乱(かんのうのじょうらん)などで室町(むろまち)幕府そのものの所有地が少なくなり、御家人たちに十分な土地を与えられませんでした。

これら相次ぐ内乱のため守護(しゅご)たちは各地で敵対勢力と戦闘をする必要がありましたが、その軍費を賄うため、室町幕府は「半済令(はんぜいれい)」という法令を発布しました。

このことにより、守護は国内の荘園・公領(こうりょう)年貢(ねんぐ)の半分を徴収する権利を手に入れます。
※守護は国内を「領国(りょうごく)」化することになり、後に鎌倉時代の守護と区別して「守護大名(しゅごだいみょう)」と呼ばれるようになります。

この頃はかろうじて寺社や帝は自分たちの荘園から多少の収入を得ていたのですが、大きな契機となったのは応仁(おうにん)元年(1467年)の応仁の乱です。

日本全国で室町幕府の支配力が弱まり、現地の武士たちが寺社領・帝の御料地に侵入して、武力を背景に年貢をすべて奪う、つまり「押領」するようになったわけです。

しまいには彼らは室町幕府の領地にも「押領」を行い、幕府そのものの収入も減少していきました。

ドラマで描かれていたのは、こうした武力を背景とした「押領」によって手に入れた土地を、摂津晴門らが自分たちのものにしていたり、恩賞として幕臣に与えていた、という内容です。
※史実としては摂津晴門がそうしたことを行っていたという記録はありません。

大きな問題ですよね。

比叡山延暦寺(ひえいざん・えんりゃくじ)や大和(やまと)の興福寺(こうふくじ)のように「僧兵(そうへい)」という武力をもっていた寺社は自分たちの領地を保つ、もしくはより強大になっていきましたが、武力をもたない寺社や公家・帝らはどんどん困窮していきました。

戦国大名や国人領主たちは戦いによって土地の奪い合いをしていましたが、その土地の中には彼らが武力で寺社・公家・帝・幕府から奪ったものも含まれていたわけです。

当時の天下人(てんかびと)には、これらの「押領」された土地をどう扱うか、という課題もあったわけです。

こんな風に、ドラマの背景にある知識が分かるとドラマをもっと楽しめます!

というわけでまだまだ説明したいことはたくさんありますが、今回は以上です!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

以下もご覧ください!

※トップ画像はイメージです。

○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・征夷大将軍 足利 左馬頭〔通称不明〕 源 朝臣 義昭〔義秋、一乗院覚慶〕
せいいたいしょうぐん あしかが さまのかみ〔通称不明〕 みなもと の あそん よしあき〔よしあき、いちじょういんかくけい〕
・織田 尾張守〔通称は三郎〕 平〔藤原、忌部〕 朝臣 信長
おだ おわりのかみ〔通称はさぶろう〕 たいら〔ふじわら、いんべ〕 の あそん のぶなが
・明智 十兵衛 源 光秀
あけち じゅうべえ みなもと の みつひで
・関白 近衛 左大臣〔通称不明〕 藤原 朝臣 前久〔晴嗣、前嗣〕
かんぱく このえ さだいじん〔通称不明〕 ふじわら の あそん さきひさ〔はるつぐ、さきつぐ〕
・朝倉 左衛門督〔通称は孫次郎〕 日下部 朝臣 義景
あさくら さえもんのかみ〔通称はまごじろう〕 くさかべ の あそん よしかげ
・摂津 掃部頭〔中務大輔。通称不明〕 藤原〔中原〕 朝臣 晴門〔晴直〕
せっつ かもんのかみ〔なかつかさのたゆう。通称不明〕 ふじわら〔なかはら〕 の あそん はるかど〔はるなお〕
・木下〔羽柴〕 藤吉郎 平〔藤原、豊臣〕 秀吉
きのした〔はしば〕 とうきちろう たいら〔ふじわら、とよとみ〕 の ひでよし
☆武家の「通称」の普及を切に願います!

参考
ゆーくんはどこ?
ぴえーるのテレビブログ
歴史上の偉人、有名人と子孫の大百科


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記事を読んでいただき、ありがとうございました!他の記事もぜひご覧下さい。
次回は『麒麟がくる』第30回について。

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今期イチオシ曲!ぜひ聞いてください!
【Cover】Nowhere Man / Joshu Washiya

※The Beatlesの楽曲のカバー。ボーカル・コーラスは筆者の声。楽器隊は打ち込みですが、機材が整い次第自分で演奏する予定です。







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