備中高松城の戦いから学ぶ―変化を受け入れる
羽柴筑前の備中進出
天正(てんしょう)5年(1577年)、織田右府信長の命令で播磨(はりま)へ進出した羽柴筑前守秀吉は、翌6年(1578年)3月の三木(みき)城の反抗や、同年5月の上月(こうづき)城の落城に遭いながらも同8年(1580年)には三木城を落とし、播磨を平定しました。
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その後因幡(いなば)に進出し、同9年(1581年)に鳥取(とっとり)城を落城させます。
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※その間、備前(びぜん)の宇喜多和泉守直家は織田(おだ)家に臣従していましたが、病死。
子の八郎家氏〔のちの秀家〕が家督(かとく)を継いでいます。
城が浮島と化した水攻め
三木城では「干(ひ)殺し」、鳥取城では「渇(かつ)え殺し」と呼ばれる凄惨な兵糧(ひょうろう)攻めを行った筑前ですが、高松城ではまた違った方法の攻め方をします。
三木城や鳥取城のように城を囲むためには複数の砦を築かなければならず、その間に毛利(もうり)の援軍が来てしまう恐れがあったためです。
その方法は「水攻め」。
筑前の参謀・黒田官兵衛孝高の献策と言われ、そばに大河があり、沼に囲まれた高松城は元来洪水で水のたまりやすい地形でした。
そこで周りを水浸しにすることで兵糧や兵員の補給を困難にし、城に備蓄してある兵糧をも水浸しにすることを思いついたようです。
城の西側から南側にかけて4kmに渡る堤防(※)を作り、足守川(あしもりがわ)の堤防を決壊させ、水を流し込んだのでした。
※2.6kmなど諸説あり。
毛利家からは毛利右馬頭輝元、吉川駿河守元春、小早川左衛門佐隆景の大軍が援軍として駆け付けますが、水攻めのために手も足も出ませんでした。
毛利家の面々は城主の清水長左衛門尉宗治に降服を勧めますが、長左衛門はかたくなに受け入れません。
そこで毛利家は筑前のもとに安国寺恵瓊を派遣し、直接和平交渉を試みます。
毛利家は和平の条件として、
・備中・備後(びんご)・美作(みまさか)・伯耆(ほうき)・出雲(いずも)の五か国を織田家に割譲(かつじょう)
・城兵の助命
を提示します。
ところが筑前は五か国割譲に加えて「清水長左衛門の切腹」を求めます。
毛利家としてはそれを認める訳にはいかないため、交渉は膠着(こうちゃく)状態に陥ります。
織田右府の援軍を恐れた毛利家は高松城に恵瓊を送り、長左衛門に話をします。
長左衛門は切腹を受け入れ、ここに織田家と毛利家の和平が成立しました。
その矢先、京都(きょうと)ではなんと「本能寺(ほんのうじ)の変」が勃発。
筑前は、織田右府が横死したという知らせを受けます。
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このことを毛利家に知られれば和平交渉は決裂し、毛利の大軍が攻め寄せてくるに違いありません。
筑前は和平条件の実行を急ぐべく、「五か国割譲」を「備中・美作・伯耆の三か国割譲」に譲歩しました。
毛利家はこの条件をのみ、長左衛門は切腹。
筑前は堤防を決壊させて水攻めを解き、高松城を受領してすぐに京都へと大軍を返しました。
いわゆる「中国大返(おおがえ)し」と言われる転進です。
羽柴筑前の適応力
ここで特筆すべきなのは、やはり筑前の変化への適応力でしょう。
まず、黒田官兵衛に水攻めを献策されたときのことを自分に当てはめて想像してみましょう。
自分の上司に水攻めを提案します。
その上司は水攻めをやったことがありません。
まず「NO」でしょうね。
「この会社で誰もやったことないし、成功する保証はあるの?」
とか言われて突っ返されそうですよね。
では、自分が上司の立場だったらどうでしょう?
やはり「NO」でしょうね。
理由は同じ。
会社でまだ誰もやったことのない方法を試すのが怖いからですね。
※人は、他人の言行については好き勝手に批判しますが、いざ自分が同じ立場に立たされると同じ行動をとってしまったりします。大切なのは「自分がその立場だったらどうするだろう?」という想像力です。
また、中国大返しに至る決断力も見事です。
せっかく割譲できるはずだった二か国を捨て、とっとと和平条件を実行して京都に転進しています。
この適応力の高さ。
すぐにでもマネしたいところですが、マネできません。
なぜでしょう?
感情を制する者は人生を制す
それは、「感情」が反発するからです。
母親に「勉強しなさい」と言われたとき、ムカッときませんでしたか?
上司にミスを指摘されたとき、ムカッときませんでしたか?
その「ムカッと」の処理の仕方が問題なんですね。
母親や上司の言っていることは正しい、と心のどこかでわかっていながら「ムカッと」をうまく処理できないため、素直に言うことをきけない。
抽象化すれば、IT化を受け入れる場合も同じです。
「脱ハンコ」を受け入れる場合も同じです。
この「ムカッと」やそれに準じる「もやもや」をうまく処理できなくては、変化を受け入れることは難しいんです。
感情を突き放す
では、「ムカッと」をうまく処理するにはどうすればいいのか?
それは感情を突き放すことです。
しかしすぐにそれはできないと思いますので、まずは「アンガーマネジメント」の手法をお勧めします。
以下の記事をご覧ください。
参考記事:
不機嫌のコントロール
参考記事:
「怒り」のコントロール(アンガーマネジメント)
関連記事:
記事『「人を怒らせたら協力しなくなります」 …』について
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記事「なぜ日本のおじさんは怒ると『責任者を呼べ!』と騒ぐのか」について
この手法で「怒りを突き放す」技術が身につくと、自分を「外側から見る」ことが可能になってきます。
視覚的なイメージで構わないのですが、自分を「外側から見た」様子をイメージしてください。
そのことによって、自分の感情を観察することが可能になり、自分の内側から聞こえる「本当はこうした方がいいのに」という声を聴きとれ、それに素直に従うことができます。
僕は以前からこのブログで「豹変力(ひょうへんりょく)」(※)ということを言っていますが、実はこの「豹変力」は今回取り上げた感情を制する技術がないと活かしきれないものなんです。
※豹変力…状況に応じて即座に気持ちややり方を切り替える力のこと。
関連記事:
三方ヶ原の合戦―最強の能力「豹変力」
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【まとめ】
・変化を受け入れるには「感情を制す」ことが必要
・「感情を制す」ためには「アンガーマネジメント」が有効
というわけで、今回は「変化を受け入れる」ということについて説明させていただきました。
まだまだ説明したいことはたくさんありますが、今回は以上です!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
以下もご覧ください!
○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・羽柴〔木下〕 筑前守〔通称は藤吉郎〕 平〔豊臣〕 朝臣 秀吉
はしば〔きのした〕 ちくぜんのかみ〔通称はとうきちろう〕 たいら〔とよとみ〕 の あそん ひでよし
・織田 右大臣〔右府。総見公。通称は三郎、上総介〕 平〔藤原、忌部〕 朝臣 信長
おだ うだいじん〔うふ。そうけんこう。通称はさぶろう、 かずさのすけ〕 たいら〔ふじわら、いんべ〕 の あそん のぶなが
・宇喜多 和泉守〔通称は八郎〕 藤原〔三宅〕 朝臣 直家
うきた いずみのかみ〔通称ははちろう〕 ふじわら〔みやけ〕 の あそん なおいえ
・宇喜多 八郎 藤原〔三宅〕 家氏〔秀家〕
うきた はちろう ふじわら〔みやけ〕 の いえうじ〔ひでいえ〕
・黒田 官兵衛 源 孝高〔祐隆、孝隆〕
くろだ かんべえ みなもと の よしたか〔すけたか、よしたか〕
・毛利 右馬頭〔通称は少輔太郎〕 大江 朝臣 輝元
もうり うまのかみ〔通称はしょうのたろう〕 おおえ の あそん てるもと
・吉川〔毛利〕 駿河守〔通称は少輔次郎〕 藤原〔大江〕 朝臣 元春
きっかわ〔もうり〕 するがのかみ〔通称はしょうのじろう〕 ふじわら〔おおえ〕 の あそん もとはる
・小早川 左衛門佐〔通称は又四郎〕 平〔大江〕 朝臣 隆景
こばやかわ さえもんのすけ〔通称はまたしろう〕 たいら〔おおえ〕 の あそん たかかげ
・清水 長左衛門尉 平 宗治
しみず ちょうざえもんのじょう たいら の むねはる
・安国寺〔武田〕 (通称不明) 源 (諱不明。法名恵瓊)
あんこくじ〔たけだ〕 (通称不明) みなもと の (諱不明。法名えけい)
☆武家の「通称」の普及を切に願います!
参考
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自転車屋男 2
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※筆者が中学生の時に作詞・高校生の時に作曲した曲を平成22年に自作RPGのBGM用に再アレンジしたものです。
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