二俣城の合戦―「見る」のではなく「観る」

鷲谷 城州

2020年01月17日 22:00


《令和6年10月19日更新》

皆さんこんばんは。
今回は「ビジネスに活かす戦国合戦術」第10弾として「二俣(ふたまた)城の合戦」について書きます。
※記事下部に武家や公家の人物名の読み仮名を載せています。


【これまでの記事】・第1回 今山の合戦・第2回 耳川の合戦・第3回 沖田畷の合戦・第4回 小豆坂の合戦・第5回 長良川の合戦・第6回 桶狭間の合戦・第7回 稲葉山城の合戦・第8回 金ヶ崎城の合戦・第9回 姉川の合戦


『歴史と旅』増刊「日本合戦総覧(昭和63年1/10臨時増刊、秋田書店)」の今川徳三氏の記事をベースに他ブログさんの記事などを参考にさせていただいております(下記)。

合戦の概要がわからなければ何を学べるかわからないので、まずは合戦概要です!

武田信玄の遠江侵攻


元亀(げんき)3年(1572年)武田信玄〔晴信〕がついに動きます。

足利将軍家(義昭)の号令により上洛(じょうらく)作戦を開始したのです。


足利家について詳しく知りたい方は、下記リンクをタップしてください:
『麒麟がくる』第36回―足利家について(1)

関連記事:
岩村城の合戦ー後ろ指を指されそうなことはしない

関連記事:
一言坂の戦い合戦に学ぶ―がむしゃらになれ


信玄は甲斐(かい)→信濃(しなの)→美濃(みの)の東山道(とうさんどう)コース、つまり織田(おだ)家領のコースではなく甲斐→遠江(とおとうみ)→三河(みかわ)の東海道(とうかいどう)コース、つまり徳川(とくがわ)家領コースへ向かいます。

織田家よりも徳川家の方が落としやすいと読んだのでしょうか。

信玄は、徳川侍従(家康)に対して武田(たけだ)軍の領内通過を黙認するように通達しますが徳川侍従は織田家との同盟の手前もあって了承せず

武田家と徳川家が衝突することとなりました。

そこで信玄の本隊は遠江犬居(いぬい)城に侵攻し、そこで四男四郎勝頼と重臣馬場美濃守(信春、信房)二俣城攻略に向かわせます



山県三郎兵衛の三河侵攻


一方武田家のもう一人の重臣(じゅうしん)である山県三郎兵衛(昌景)は、別動隊として信濃から三河に侵入しました。

元徳川家臣であった山家三方衆(やまがさんぽうしゅう)の先導によると言われております。

大した抵抗もなく東三河を攻略し、三河から遠江に入る入口に位置する井平(いだいら)城を攻め落としました
(下記地図参照)




これで徳川家の第2の拠点である岡崎(おかざき)城から遠江への援軍を送るための進路を断つことになります。

確実に浜松(はままつ)城を孤立させ、徳川侍従の降服を誘う形を作っていることが分かりますね。



二俣城落城


10月に三郎兵衛は武田四郎・馬場美濃守と合流して二俣城の攻略に取り掛かります

天竜川(てんりゅうがわ)と二俣川(ふたまたがわ)に囲まれた二俣城天然の要害で、力攻めで落とすのは容易でない城です。

※参考:二俣城狭域図



そのため武田軍としては兵糧(ひょうろう)攻めを行いたいところでしたが、城内には十分備蓄がありました

そこで武田軍お得意の、水の手を断つ作戦を行おうとしますが、二俣城はどこから水を得ているのかわかりませんでした。

結局武田軍は城を囲みはしたものの、落とせずに時が経ちましたが、11月に入って武田軍の斥候(ものみ)はついに水源を発見しました。

二俣城の守勢は天竜川に釣瓶(つるべ)を落とし、水を汲んでいたのです。
それまでは雑木(ぞうき)に隠れて釣瓶が見えなかったのですが、冬が近づいて木々が葉を落としたことで釣瓶が露出したのでした。

そこで武田軍は筏を釣瓶縄に何度も激突させて縄を切り、水の手を断つことに成功しました。

水の手を断たれた二俣城守勢はすぐに降服し、城将中根正照は浜松城へ退去しました。



ビジネスに活かす要素は?


この戦いの勝因としては、まず武田信玄お得意の「碁石戦略」(僕が命名しました笑)でしょうかね。
戦の基本ではあるので誰もがやっているのですが、武田信玄と上杉謙信は特に拠点戦略がうまく、広い範囲に碁石を置くように拠点を攻略していきます。


参考記事:
碁石戦略と戦前勝利型戦略―武田・上杉・毛利・長宗我部の戦い方

参考記事:
三増峠の合戦―撤退は計画的に

参考記事:
箕輪城の合戦―圧倒的有利な状況を作る


今回もその作戦がうまくいっており、井平城などの拠点を先に攻略することによって、徳川軍が二俣城へ援軍を送ることを不可能にしています

そして、これもいつもの武田軍の戦略ですが、城は力攻めにせず水の手を断つことですかね。
通常なら武田軍は城内の井戸へつながる地下水脈を発見して、そこに毒を流し込んだりしています。

で、これを現代のビジネスに活かすとしたら
・鋭敏な観察力と持久力

ですかね。
水の手を発見できたのは斥候が毎回サボらずに観察を続けた結果だと思います。

現代ビジネスの世界でも具(つぶさ)に観察し、「共通点を発見する力」「違いを発見する力」が超重要です。
いや、それがすべてといっていいかもしれません。

共通点を発見することで次の展開を予想し、あらかじめ動くことが可能になりますし、違いを発見することで今回の合戦のように突破口を見出すことが可能です。

というわけで、ビジネスマンの皆さんは普段から「見るのではなく観る」「聞くのではなく聴く」を実践し、物事や人々の言動を深く観察するクセをつけましょう!

今回は以上です!


次回の記事を読みたい方は、下記リンクをタップしてください:
一言坂の戦い合戦に学ぶ―がむしゃらになれ


※画像はイメージです。

○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・武田 大膳大夫〔通称は太郎〕 源 朝臣 晴信〔入道信玄〕
たけだ だいぜんのだいぶ〔通称はたろう〕 みなもと の あそん はるのぶ〔入道しんげん〕
・征夷大将軍 足利 左近衛中将〔通称不明〕 源 朝臣 義昭〔義秋〕
せいいたいしょうぐん あしかが さこんえのちゅうじょう〔通称不明〕 みなもと の あそん よしあき〔よしあき〕
・徳川 侍従〔通称は次郎三郎〕 源 朝臣 家康
とくがわ じじゅう〔通称はじろうさぶろう〕 みなもと の あそん いえやす
・武田〔諏訪〕 四郎 源〔神〕 勝頼
たけだ〔すわ〕 しろう みなもと〔みわ〕 の かつより
・馬場 美濃守〔通称不明〕 源 朝臣 信春〔信房〕
はば みののかみ〔通称不明〕 みなもと の のぶはる〔のぶふさ〕
・山県 三郎兵衛尉 源 昌景
やまがた さぶろうひょうえのじょう みなもと の まさかげ
・中根 (官職・通称不明) 平 正照
なかね (官職・通称不明) たいら の まさてる
☆武家の「通称」の普及を切に願います!

参考
井戸櫓の写真が掲載されています。
お城散歩
らんまる攻城戦記~兵どもが夢の跡~
武田信玄の遠江侵攻のルートについて
今年もスローライフで!!


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※The Beatlesの楽曲のカバー。ボーカル・コーラスは筆者の声。楽器隊は打ち込みですが、機材が整い次第自分で演奏する予定です。






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