九戸城の戦いに学ぶ―事態を過小評価しない
九戸城の戦いまでの流れ
九戸城は甲斐源氏(かいげんじ)の一族である南部(なんぶ)家の庶流・九戸家が代々居城する城でした。
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九戸家は16世紀には、北奥(ほくおう)の雄・南部家中で一大勢力を保持していました。
天文(てんぶん)10年(1541年)、九戸家の主家である南部家は大膳大夫晴政が当主となりましたが、大膳大夫には男子がいませんでした。
そのため永禄(えいろく)8年(1565年)、大膳大夫は従弟である田子九郎信直を婿養子としました。
しかし後の元亀(げんき)元年(1570年)、大膳大夫に男子が生まれ、九郎信直は大膳大夫に疎まれ始めました。
九郎は嗣子(しし。※後継ぎとなる子のこと)を辞退しましたが、南部家中は大膳大夫晴政派と九郎信直派に分裂していきます。
九戸家は、当時力をもっていた左近将監政実の弟・彦九郎実親の正室として大膳大夫の次女を迎えており、大膳大夫の陣営に組み込まれていました。
しかし天正(てんしょう)10年(1582年)に大膳大夫が死去し、南部家家督は大膳大夫の嫡男(ちゃくなん)・彦三郎晴継が継ぎますが、直後に暗殺されてしまいます。
彦三郎亡き後の南部家家督として、大膳大夫の長女の夫・九郎信直と次女の夫・九戸彦九郎実親が候補に挙げられ、家臣の中で評定が行われました。
当初は九戸彦九郎が優勢だったものの、南部家臣の中で有力者であった八戸氏が九郎信直派についたことで形勢が逆転し、結局家督は九郎信直が継ぐこととなりました。
九戸左近将監政実は当然、弟の彦九郎を推していましたが、跡目争いで彦九郎が敗れ九郎信直が南部家当主となったことに大いに不満を抱きました。
この後、九戸左近は自分が正統な南部家当主であると主張するようになりましたが、九郎は天下人である関白羽柴秀吉とつながりをもち、天正18年(1590年)の小田原征伐(おだわらせいばつ)、次いで奥州仕置(おうしゅうしおき)に参陣し、南部家当主としてのお墨付きを得ました。
参考記事:
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このことで左近の南部家当主継承は絶望的となりました。
九戸城の戦い
天正19年(1591年)3月、九戸左近はついに反・南部九郎の兵を挙げ、本拠である九戸城周辺の諸城を次々と落としていきました。
そもそもが、九戸家は南部軍の主力を担っていた一族であったため、南部九郎は歯が立たず、耐えきれずに関白秀吉に援軍要請の使者を送りました。
同年6月、関白は、甥である羽柴権中納言秀次を総大将として徳川前左近衛大将家康、上杉参議景勝、前田前参議利家、石田治部少輔三成、蒲生左近衛少将氏郷らを派遣して九戸左近討伐を開始しました。
九戸軍5,000に対して羽柴軍は6万。
九戸軍は健闘しますが、衆寡(しゅうか)敵せず、圧倒されます。
一説によると、左近は城の南にある波打峠(なみうちとうげ)を防衛すれば敵軍は城に近づくことさえできないと踏んでそこに兵を派遣したそうです。
しかし、羽柴軍はそこを避けて城の西側に回り込みました。
背後を突かれた波打峠の部隊は急いで城に逃げ込んだというエピソードがあります。
最終的に、浅野弾正長吉〔長政〕が九戸家の菩提寺(ぼだいじ)である長興寺(ちょうこうじ)の和尚(おしょう)を使者として「開城するならば全員助命する」との条件を提示しました。
左近は女子供や城兵が助かるならば、と城を後にして羽柴(はしば)軍に降伏しましたが、その条件は嘘でした。
城将(じょうしょう)や城兵(じょうへい)、その妻子は皆殺しにされ、羽柴軍の陣にいた左近や他の武将たちも次々と処刑され、乱は収束しました。
事態を過小評価しない
九戸左近の敗因ですが、それは状況を甘く見たせいなのかなと思っています。
上にも書いたように、九戸軍は南部家の中でも精鋭で、南部家の主だった闘いで主力軍として活躍していました。
そのため、南部九郎信直の軍は九戸軍には歯が立ちませんでした。
しかし、九戸左近は負けました。
その理由としては、羽柴軍が大軍勢を動員してくること、また、羽柴軍を構成している武将たちが歴戦の勇士たちであったこと等、その実力を過小評価したせいなのではないかと思います。
波打峠を守らせていた話も事実かどうかはわかりませんが、事実だとすれば詰めが甘いですよね。
敵の実力をきちんと尊敬の念をもって評価し、作戦をめぐらせていれば波打峠を避けて進軍してくることなどが読めたかもしれません。
今回の新型コロナウイルスの話もそうですが、人はどうも問題を過小評価する傾向がある気がしています。
「○○すれば大丈夫でしょ?」
みたいなセリフをよく聞きます。
しかし、安全や防衛に関わることで手を抜いて、何かいいことがあるのでしょうか?
万が一安全や防衛が脅かされた場合、痛いし怖いしお金もかかるしで、きちんと対策をとるのにかかるコストの数倍のダメージを受ける可能性が高いです。
そう考えると、「事態を過小評価する」意味がわからなくなってきます。
安全、防衛に関する問題は常に若干の過大評価、「そこまで悪いことは起こらないだろう」と思えるレベルまで対策をして、初めて守れるものだと感じています。
臆病だと言われようが、「そんなこと起こらないよ」とバカにされようが、安全・防衛に関することには少々過剰ともいえる対策をした方がいいです。
ということで、今回は「事態を過小評価しない」ということについて説明させていただきました。
まだまだ説明したいことはたくさんありますが、今回は以上です!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
以下もご覧ください!
○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・九戸 左近将監〔通称不明〕 源 朝臣 政実
くのへ さこんのしょうげん〔通称不明〕 みなもと の あそん まさざね
・南部 大膳大夫〔幼名は彦三郎。通称は右馬助〕 源 朝臣 晴政〔安政〕
なんぶ だいぜんのだいぶ〔幼名はひこさぶろう。通称はうまのすけ〕 みなもと の あそん はるまさ〔やすまさ〕
・南部〔石川、田子〕 大膳大夫〔通称は亀九郎、九郎〕 源 朝臣 信直
なんぶ〔いしかわ、たっこ〕 だいぜんのだいぶ〔通称はかめくろう、くろう〕 みなもと の あそん のぶなお
・九戸 彦九郎 源 実親
くのへ ひこくろう みなもと の さねちか
・南部 彦三郎 源 晴継
なんぶ ひこさぶろう みなもと の はるつぐ
・関白 羽柴〔木下〕 前内大臣〔通称は藤吉郎〕 豊臣〔平、藤原〕 朝臣 秀吉
かんぱく はしば〔きのした〕 さきのないだいじん〔通称は藤吉郎〕 とよとみ〔たいら、ふじわら〕 の あそん ひでよし
・羽柴〔木下、宮部、三好〕 権中納言〔通称は孫七郎〕 豊臣〔源〕 朝臣 秀次〔吉継、信吉〕
はしば〔きのした、みやべ、みよし〕 ごんのちゅうなごん〔通称はまごしちろう〕 とよとみ 〔みなもと〕 の あそん ひでつぐ〔よしつぐ、のぶよし〕
・徳川 前左近衛大将〔通称は次郎三郎〕 源 朝臣 家康
とくがわ さきのさこんえのだいしょう〔通称はじろうさぶろう〕 みなもと の あそん いえやす
・上杉〔長尾〕 参議〔通称は喜平次〕 藤原〔平〕 朝臣 景勝〔顕景〕
うえすぎ〔ながお〕 さんぎ〔通称はきへいじ〕 ふじわら〔たいら〕 の あそん かげかつ〔あきかげ〕
・前田〔羽柴〕 前参議〔通称は又左衛門〕 菅原〔豊臣〕 朝臣 利家
まえだ〔はしば〕 さきのさんぎ〔通称はまたざえもん〕 すがわら〔とよとみ〕 の あそん としいえ
・石田 治部少輔〔通称は佐吉〕 下毛野?〔平?〕 朝臣 三成
いしだ じぶのしょう〔通称はさきち〕 しもつけのぬ?〔たいら?〕 の あそん みつなり
・蒲生 左近衛少将〔通称は忠三郎〕 藤原 朝臣 氏郷〔教秀、賦秀〕
がもう さこんえのしょうしょう〔通称はちゅうさぶろう〕 ふじわら の あそん うじさと〔のりひで、やすひで〕
・浅野 弾正少弼〔通称は弥兵衛〕 源 朝臣 長吉〔長政〕
あさの だんじょうのしょうひつ〔通称はやへえ〕 みなもと の あそん ながよし〔ながまさ〕
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参考
お城へ行こう!
岩手吟遊詩人の写真館
にわかお城ファンの歴史探訪記
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