武士道を追究したい人はコレ!!津本陽『名臣伝』

鷲谷 城州

2019年11月10日 22:00


《令和6年5月7日更新》

皆さんこんばんは。
今回は歴史小説の大家津本陽氏の名作『名臣伝(めいしんでん)のご紹介です。
※記事下部に武家や公家の人物名の読み仮名を載せています。

津本陽氏の著作についての記事を読みたい方は、下記リンクをタップしてください:
津本陽『椿と花水木』

外国人が流入してきて日本人のアイデンティティが問われ始めて久しい今日この頃。
そのアイデンティティの一要素として「武士道」が叫ばれてこれまた久しいですが、とかく「武士道」というものは尾ひれがついて都市伝説化している感があります。

今回の津本陽(つもと・よう)氏の『名臣伝』は津本氏の出身地である紀州(きしゅう)藩に伝わる武士、特に初期の武士たちの逸話を集めた短編集です。


「武士道」に言及した記事:
一言坂の戦い合戦に学ぶ―がむしゃらになれ

同上:
ラストサムライ

同上:
若松義人『トヨタ流「最強の社員」はこう育つ』

「紀州」関連の記事:
雑賀・根来合戦から学ぶ―つまらない職場を楽しくする方法


↓こちらの作品について書いています。

名臣伝 (文春文庫)

初期紀州藩の家臣団


紀州藩は徳川家康の十男徳川頼宣が駿府(すんぷ)藩から移封(いほう)され、成立した親藩(しんぱん)です。
その紀州移封の際に連れて行った家臣はほとんどが駿府藩時代からの家臣であり、徳川譜代(とくがわ・ふだい)の家臣団でした。

その中でも際立つのがいわゆる「横須賀党(よこすか・とう)」と呼ばれる集団です。
彼らは関東(かんとう)移封以前の徳川家において遠江(とおとうみ)横須賀城を守っていた大須賀五郎左衛門尉康高の旧臣(きゅうしん)で、武田(たけだ)方に奪われた高天神(たかてんじん)城を奪回する際の猛攻撃に加わった武士たちでした。


関連記事:
第二次高天神城の合戦-勝者の戦法を徹底的にトレースせよ

関連記事:
第一次高天神城の合戦-場を俯瞰する


その武勇は当時から語り草になっており、徳川家臣団の中でもその勇猛さは特にたたえられていたようです。




藩内外に響いた武勇


そんな横須賀党の子孫として名を連ねているのが市川門太夫
剣術の達人であったが藩に藩政批判を疑われ、神文(しんもん)(神に誓う文書)を書いて藩に潔白を訴えるように勧められたが、それを「腰抜け侍のすること」といって自ら首を切って果てるというすさまじさ。

また、横須賀党出身者以外でも武勇の家臣たちの個性が光ります。

長篠設楽原(ながしの・したらがはら)の戦いで武田の名将内藤修理亮を討ち取る、小牧・長久手(こまき・ながくて)の戦い羽柴筑前隊を攪乱(かくらん)し大手柄を挙げるなどの活躍をし、老いてもなおその気迫を保ち続けた朝比奈惣左衛門

関連記事:
長篠の合戦―プライドよりも信頼関係を重視せよ

関連記事:
小牧長久手の戦いに学ぶ―勝ちすぎてはいけない


普段は温厚であるが紀州藩を貶めるような発言には容赦せず、年上で武勇の将である井伊掃部頭直孝を黙らせる迫力をもった安藤飛騨守直治など、総勢14人の家臣たちが名を連ねています。




徳川家臣団のすさまじさ


こんな感じで江戸(えど)時代初期の紀州藩の家臣たちのエピソードを集めた本作品ですが、そこで垣間見えるのは徳川家臣団のすさまじさですね。

よく戦国(せんごく)時代最強の武将は?みたいな問いがなされますが、それは間違いなく徳川家康だと思います。

彼は温厚な人柄だと思われていることが多く、合戦の武勇もあんまり語られることはないのですが、実は直情型の武将だったという話があります。

家臣団も異常なまでに忠誠心が高く、猪突猛進(ちょとつもうしん)の猛攻を行う武将が多かったようです。

現に、徳川家康が直接参加していて負けたのは桶狭間(おけはざま)の戦いと三方ヶ原(みかたがはら)の戦いの二戦のみで、あとは勝ち続けているんですね。
(武田軍にいくつか城を落とされるなど、参加していない戦での敗戦はいくつかありますが)


関連記事:
桶狭間の合戦―不利な状況を受け止める

関連記事:
三方ヶ原の合戦―最強の能力「豹変力」


そんな徳川家最強説を裏付けるエピソードとして、また、江戸時代初期の生々しい「武士道」を語る上で欠かせないのがこの『名臣伝』です。

是非ご賞味ください!

※画像はイメージです。

○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・徳川 内大臣〔通称は次郎三郎〕 源 朝臣 家康
とくがわ ないだいじん〔通称はじろうさぶろう〕 みなもと の あそん いえやす
・徳川 権大納言〔通称不明〕 源 朝臣 頼宣
とくがわ ごんのだいなごん〔通称不明〕 みなもと の あそん よりのぶ
・大須賀 五郎左衛門尉 平 康高
おおすが ごろうざえもんのじょう たいら の やすたか
・市川 門太夫 源 (諱不明)
いちかわ もんだゆう みなもと の (諱不明)
・内藤 修理亮〔通称は源左衛門〕 藤原 朝臣 昌豊
ないとう しゅりのすけ〔通称はげんざえもん〕 ふじわら の あそん まさとよ
・羽柴 太政大臣〔通称は藤吉郎〕 豊臣 朝臣 秀吉
はしば だじょうだいじん〔通称はとうきちろう〕 とよとみ の ひでよし
※豊臣秀吉は「羽柴秀吉」から「豊臣秀吉」に改名したわけではない(参考:『麒麟がくるまでお待ちください』第4回―羽柴藤吉郎の名称
・朝比奈 惣左衛門 藤原 泰倫
あさひな そうざえもん ふじわら の やすとも?
・井伊 掃部頭〔通称は弁之助〕 藤原 朝臣 直孝
いい かもんのかみ〔通称はべんのすけ〕 ふじわら の あそん なおたか
・安藤 飛騨守〔通称は彦兵衛〕 安倍 朝臣 直治
あんどう ひだのかみ〔通称はひこべえ〕 あべ の あそん なおはる
☆武家の「通称」の普及を切に願います!

参考
今回はなしです。


☆「この人の書いてること、ちょっと面白いかも」と思った方はぜひメルマガ登録してみてください!

歴史を学んで、知識をつけるだけではなく「歴史を活かして自分の生きたい人生を歩む」というテーマで、ブログでは語れない話などを書いています。

↓こちらの画像をタップしてください↓


また、メルマガに登録してメルマガに記載されているメールアドレス宛にリクエストを送っていただければ、順次お応えします。


・○○(武将、合戦等)について語ってほしい
・大河ドラマ(『軍師官兵衛』以降)について語ってほしい
・今、○○について悩んでいるが、どの武将を参考にしたらいいか

…等々

ブログと違ってほぼリアルタイム配信なので、会話をしているかのようなコミュニケーションが楽しめます!

登録、お待ちしています!

※メルマガが迷惑メールフォルダや「プロモーション」フォルダに入っている可能性があります。
不定期配信なので、ちょこちょこチェックして、迷惑メールフォルダ等に入らないように設定しておいてください。


↓津本陽氏の著作が気になった方は、下記リンクをタップして書籍を購入してぜひ楽しんでください!

名臣伝 (双葉文庫)

深淵の色は 佐川幸義伝

小説渋沢栄一 上 (幻冬舎文庫) (幻冬舎文庫 つ 2-12)

threadsX(旧twitter)facebookでのフォロー、お待ちしてます!

/
記事を読んでいただき、ありがとうございました!他の記事もぜひご覧下さい。
次回は「ビジネスに活かす戦国合戦術⑥桶狭間の合戦」。

//
今期イチオシ曲!ぜひ聞いてください!
I Feel Glad (BGM Ver.) / Joshu Washiya

※筆者が中学生の時に作詞・高校生の時に作曲した曲を平成22年に自作RPGのBGM用に再アレンジしたものです。







関連記事