『麒麟がくる』第5~6回―当時の京都の情勢

鷲谷 城州

2020年03月13日 21:00


《令和6年8月2日更新》

皆さんこんばんは。
今回は今年の大河ドラマ『麒麟(きりん)がくる』第5~6回)に関しての楽しみ方を解説したいと思います。

大河ドラマを見てみたけれど、歴史もよくわからないし、どう楽しんでいいのかわからない
歴史には興味あるけど、自分では積極的に勉強する気になれない、という方必見です!
※記事下部に武家や公家の人物名の読み仮名を載せています。


【『麒麟がくる』の楽しみ方】・第1~2回―同時代の三傑と戦の様子・第3~4回―美濃の政治情勢と織田家の状況


まずはあらすじ。




第5~6回のあらすじ


尾張(おわり)から戻った明智十兵衛(長谷川博己)は鉄砲(てっぽう)の構造を知るために明智荘(あけちのしょう)出身の鉄砲鍛冶伊平次(いへいじ)(玉置玲央)という男を探した。

鉄砲鍛冶をやっているという近江国友村(おうみ・くにともむら)に行ったが将軍家(しょうぐんけ)の緘口令(かんこうれい)が布(し)かれていたため、伊平次は見つからない。
十兵衛はなんとか伊平次が京(きょう)にいるという情報を手に入れた。

斎藤山城守(本木雅弘)の許可を得て一路京へ向かうが、そこで細川藤孝(眞島秀和)という武士と出会う
彼は将軍家足利義輝(向井理)の側近で、堺(さかい)で出会った三淵藤英(谷原章介)の弟であった。

藤英に連れられて松永久秀(吉田鋼太郎)と再会した十兵衛は伊平次の居場所へ案内される。

遊女屋(ゆうじょや)にいた伊平次に鉄砲の分解を頼んだ十兵衛だったが、となりの部屋で久秀の主人である三好長慶(山路和弘)襲撃の計画を話しているのをきいてしまう

長慶と久秀の救援のために三淵藤英を訪れる十兵衛だったが、藤英は動かない。

しかし、話を立ち聞いていた将軍家義輝の命令により藤孝は十兵衛のあとを追う

十兵衛と藤孝は長慶と久秀の救援に間に合うが、十兵衛は負傷してしまう…

ということで、

第5回「伊平次を探せ」の感想


まだ面白くないですね笑
平成8年の大河ドラマ「秀吉(ひでよし)」や平成26年の「軍師官兵衛(ぐんし・かんべえ)」のようなわくわく感がないんでね。

『秀吉』についての記事を読みたい方は、下記リンクをタップしてください:
『麒麟がくるまでお待ちください』第4回―羽柴藤吉郎の名称

しかし、まだまだ序盤ということで伏線を期待してますよ!

あとは細川与一郎藤孝との出会い方や、三淵弾正藤英、松永弾正久秀との再会が唐突すぎるなとは思いました。


関連記事:
『麒麟がくる』第30回―三淵氏の来歴

関連記事:
『麒麟がくる』第35回―細川藤孝について

関連記事:
『麒麟がくる』第34回―松永弾正の出自


ただ、わかりやすくないと視聴率を取れない昨今、仕方のない展開かなと思いました。

あとは、斎藤義龍(伊藤英明)に旧名である「高政」を名乗らせているのに、将軍家義輝には「義藤」を名乗らせていないのが不思議でなりません。

通称と諱(いみな)の話もそうですが、せめて呼称のルールを統一してほしい…

参考記事:
武家や公家の名前について




第5回の楽しみ方―当時の京都の情勢―


さて、今回さらりと描かれたのは当時の複雑な京都(きょうと)の情勢ですね。

ドラマとしては、当時の将軍家をめぐる情勢を中途半端に描くと混乱のもとなので、ほぼ描かないまま人物のみにフォーカスしたのは良い判断だったと思います。

というわけで、このブログでは絶好の材料になるわけですが、まず前提としてわかっていただかなくてはいけない概念があります。

・当時の武士に江戸時代の武士のような忠義の心はなかった!

ということをわかっていないと京都の情勢を理解するのは難しいです。

基本的に当時の武士たちは「殿様のため」というよりも、個々の武将単位の利害判断で動いている感じです。

武士の主従関係を現代の雇用関係に例えると、江戸時代は終身雇用のイメージですが、戦国時代は武将個人単位の契約的要素が強いようです。

江戸時代の武士:
武士道を追究したい人はコレ!!津本陽『名臣伝』

だから、「この殿様だめだな」と思ったら割とすぐ出奔(しゅっぽん)しますし、下手をすれば「下剋上(げこくじょう)」を起こすわけですね。
あまり典型的なイメージ通りの主従関係はなかったようです。

というわけなので今回京都で登場した人物たちは

・足利将軍家(義輝)(「将軍家」は家ではなく個人を表す呼称)
・細川与一郎(藤孝)
・三淵弾正(藤英)
・松永弾正(久秀)
・三好筑前(長慶)
・細川京兆(晴元)

ですが、彼らに関する具体的な敵対関係については下記第6回の項目で説明したいと思います。

※どうでもいい話ですが、僕の曾祖母は阿波三好氏の出身なので三好長慶は親戚ということになりまして、なんとも誇らしい気持ちです笑
(令和5年8月28日注:その後の調べで、子孫だという説が浮上しましたw)




第6回「長慶襲撃計画」の感想


与一郎藤孝と刀を抜きあった十兵衛があんなに簡単に与一郎藤孝と和解して、松永弾正久秀のもとに行くというご都合主義展開はなんとも不満でした笑

しかし、物語の都合上こんなところでそんなに時間を取っている余裕もないと思うので、まぁそこは言及せずにおきましょう笑

連歌会(れんがかい)の描写は良かったですよ!
下記『BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)』さんも言っておられますが、連歌会の描写というのは僕もあまり見たことがなかったので新鮮でした。

しかし屋内戦の様子はどうなんでしょう?
みんな太刀(たち)で戦っていたと思いますが、通常の太刀の長さだと天井とか梁(はり)とかに引っかかって屋内ではうまく戦えません。
(屋内で太刀を手に取ったことのある方はわかると思うのですが、横に振り回すことは案外できるのですが、振りかぶったら大体上に引っかかります

他のドラマも含めて、テレビではよく屋内で太刀を振り回している様子を見るのですが、現実的ではないのではないでしょうか?
脇差(わきざし)とか小刀の方がうまく戦えそうです。

僕自身、屋内戦に詳しい訳ではないので真相はわかりませんが…




第6回の楽しみ方―具体的な京都の勢力模様―


というわけで、当時の京都をめぐる情勢の確認ですね。

応仁(おうにん)元年(1467年)の応仁の乱以来、京都は覇権争いで将軍家と管領(かんれい)家である細川京兆(ほそかわ・けいちょう)争いを続けていました

細川家の出自に触れている記事:
『麒麟がくる』第36回―足利家について(1)

しかし、現代人が分かりやすいような「〇〇さんは東軍(とうぐん)、△△さんは西軍(せいぐん)」というように陣営が明確なわけではなく、時期によって誰と誰が味方で誰が敵、という構図が目まぐるしく変わります

というわけで、当時の勢力の様子を図解したいと思います。

まずは細川京兆(今後は他の京兆家の人物と区別するため通称の「六郎」を用います)晴元の名前が目立ち始める大永(たいえい)7年(1527年)ごろの勢力図です。
(クリックで拡大されます)

①大永7年ごろの勢力図


このころはまだ将軍家義輝は生まれておらず、父の足利右大将義晴の代でした。
(義輝は義晴と区別するため「左中将義輝」、義晴は「右大将義晴」と表記します)

右大将義晴は当時の京兆家当主細川民部少輔(みんぶのしょう)高国(高国も「京兆」ですが、晴元との区別のため「民部少輔(高国)」と記述します)と組んでおりましたが、その民部少輔高国が先代京兆家当主の子六郎晴元と対立

六郎は右大将義晴に対抗するために義晴の弟の左馬頭義維を担ぎ上げます。
(三好(みよし)家は阿波(あわ)細川家の被官(ひかん)です。
六郎の家はもともと阿波細川家の血筋なので、三好筑前守元長は六郎についています)


関連記事:
『麒麟がくる』第22回―三好氏の血縁関係

関連記事:
『麒麟がくる』第23回―三好氏の血縁関係(2)



それから5年ほどたって、天文(てんぶん)元年(1532年)ごろの勢力図です。

②天文元年ごろの勢力図


細川民部少輔が六郎に敗れて自害しますが、右大将義晴は六郎と和解せず。
そんな中、六郎の重臣(じゅうしん)筑前守元長が六郎と対立し、討ち死にします。

③天文12年(1543年)ごろの勢力図


その後右大将は六郎と和解しますが、民部少輔の養嗣子(ようしし)(あとつぎの養子)細川次郎氏綱が台頭し、六郎と対立します。

立て続けになりますが、天文15年ごろの図です。
今回の大河のスタートが天文16年ですので、だいぶ近いころの様子です。

④天文15年(1546年)ごろの勢力図


右大将は嫡子(ちゃくし)の左中将義輝〔当時は義藤〕に将軍職(しょうぐんしき)を譲りますが、変わらず実権は保っています。

右大将は対立していたはずの細川次郎氏綱と手を組み、六郎晴元と対立します。

このころになると三好筑前守元長の嫡子筑前守長慶が力をつけ始めます

で、次は今回の話の舞台となった天文17年(1548年)の翌年、天文18年ごろの勢力図です。

⑤天文18年ごろの勢力図


実はこのころも右大将義晴は存命なんですね。
しかも、足利陣営は六郎晴元の側についており、三好筑前(長慶)&松永弾正(久秀)とは対立しているではないですか!

どういうことかというと足利陣営は、天文17年に六郎晴元と仲直りして、逆に次郎氏綱とは対立します。
(今回大河で描かれたのがこのころです)

しかし六郎晴元の重臣だったはずの筑前守長慶は後に主人を裏切り次郎氏綱陣営についてしまうんですね!

実際大河の段階では晴元と長慶の対立がここまで激化しておりませんが、当時足利左中将義輝は六郎晴元と仲良しで、その晴元は三好筑前守長慶と対立しかけていました。

物語のように、義輝の家臣である藤英や藤孝が、晴元が画策した三好長慶襲撃のときに長慶の味方として駆け付けるのは微妙な情勢なんですね。

おそらく今回の三淵弾正藤英の、長慶の救援を渋る発言は上記史実を踏まえての話だと思います。

こんな感じで、多少の知識があると物語はより楽しくなります!

気楽に知識を身に着けて、大河ドラマをもっと楽しみましょう!

(※実際は上記勢力図に六角(ろっかく)氏や朽木(くつき)氏などが絡んでくるのでもう少し複雑です)


次回の記事を読みたい方は、下記リンクをタップしてください:
『麒麟がくる』第7~8回ー尾張国内の政治情勢/当時の三河情勢


※トップ画像はイメージです。

○今回登場した人物のフルネーム(参考:「武家や公家の名前について」)
・明智 十兵衛 源 光秀
あけち じゅうべえ みなもと の みつひで
・征夷大将軍〔将軍家〕 足利 左近衛中将〔略称「左中将」。通称不明〕 源 朝臣 義藤〔義輝〕
せいいたいしょうぐん〔しょうぐんけ〕 あしかが さこんえのちゅうじょう〔略称「さちゅうじょう」。通称不明〕 みなもと の あそん よしふじ〔よしてる〕
・斎藤 山城守〔通称は新九郎〕 藤原 朝臣 利政〔道三。他多数〕
〔長井 新九郎 藤原 規秀〕
さいとう やましろのかみ〔通称はしんくろう〕 ふじわら の あそん としまさ〔どうさん。他多数〕
〔ながい しんくろう ふじわら の のりひで〕

・細川 与一郎 源 藤孝
ほそかわ よいちろう みなもと の ふじたか
・三淵 弾正左衛門尉〔または弥四郎〕 源 藤英
みつぶち だんじょうさえもんのじょう〔またはやしろう〕 みなもと の ふじひで
・松永 弾正忠〔または弾正少弼。通称は不明〕 紀?(藤原?、源?〕 朝臣 久秀
まつなが だんじょうのじょう〔またはだんじょうのしょうひつ。通称は不明〕 き?〔ふじわら?、みなもと?〕 の あそん ひさひで
・三好 筑前守〔通称は孫次郎〕 源 朝臣 長慶
みよし ちくぜんのかみ〔通称はまごじろう〕 みなもと の あそん ながよし
・細川 右京大夫〔略称「京兆」。通称は六郎〕 源 朝臣 晴元
ほそかわ うきょうのだいぶ〔略称「けいちょう」。通称はろくろう〕 みなもと の あそん はるもと
・征夷大将軍〔将軍家〕 足利 右近衛大将〔略称「右大将」。通称不明〕 源 朝臣 義晴
せいいたいしょうぐん〔しょうぐんけ〕 あしかが うこんえのだいしょう〔略称「うだいしょう」。通称不明〕 みなもと の あそん よしはる
・細川 右京大夫〔民部少輔。通称は六郎〕 源 朝臣 高国
ほそかわ うきょうのだいぶ〔みんぶのしょう。通称はろくろう〕 みなもと の あそん たかくに
・足利 左馬頭〔通称不明〕 源 朝臣 義維
あしかが さまのかみ〔通称不明〕 みなもと の あそん よしつな
・三好 筑前守〔通称不明〕 源 朝臣 元長
みよし ちくぜんのかみ〔通称不明〕 みなもと の あそん もとなが
・細川 次郎 源 氏綱
ほそかわ じろう みなもと の うじつな
☆武家の「通称」の普及を切に願います!

参考
第5回
はじめての三国志
ドラマ@見とり八段
今日は何の日?徒然日記
第6回
telling,
大河ドラマネタバレ感想日記!
BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)


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