アガサ・クリスティー『書斎の死体』

鷲谷 城州

2007年04月06日 12:25


David ConnellyによるPixabayからの画像

クリスティーの分身であるかのような、人間観察に長けた老婦人「ミス・マープル」の物語。

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↓こちらの本について書いています。

書斎の死体 (ハヤカワ文庫) [ アガサ・クリスティ ]




ある日、セント・メアリー・ミードに住む退役軍人バントリー大佐の屋敷の書斎から若い女性の死体が発見される。村では大佐の浮気と殺人を噂し、大佐は弱り果ててしまうが、無関係を主張するバントリー大佐の夫人がマープルに調査を依頼。次第に真実が明るみに出て行く…。

クリスティー自信がこの本の前書きで「“よく知られたテーマで斬新な変化のある”ものを書きたい」(高橋豊氏訳)と述べているように、「書斎にある日突然身元不明の死体が転がっている」という推理小説ではありがちで、且つ現実にはほとんどありえない状況でこの小説は始められている。

つまりはこの小説の最大のテーマは「書斎に死体があったこと」で、その後の展開は全てこの設定とつじつまが合うように後付されているように感じる。
しかし、そこはクリスティー。見事に整合する展開をつむぎだす。

そしてやはりクリスティー。最終的には数組の夫婦の愛情を描くことになる。
結果的にはいつもどおり全く予想外の結末へ…。

推理小説としては地味な方だと思いますが、ミス・マープルのシリーズでは共通するのでしょうか?しっとりとした愛情深い作品に仕上がっていると思います。
そんなゆったりしたミステリーを読みたい方にお勧め☆

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